TはTOKYOのTのブログ

映画ログを中心にしております。映画館での鑑賞が中心です。旧作より新作が過半数を超えるのが方針としてます。

2023年9月映画鑑賞

長江哀歌
目黒シネマ
歌の強さがとんでもないけれど、中盤の坊主頭で汗を掻いているおっさんが一番力強い。元嫁を探す旅だけれど、山河ノスタルジアともつながる、ジャ・ジャンクーのベーシックなテーマなのかもしれない。劇を転がさないという文法の強さはいつもだけれど力強い。途中で「男たちの挽歌」をテレビで見て、タバコにメモで火をつける直接的なパロディがある。

 
世界

目黒シネマ
バンドエイドないの?から始まる。劇伴の強さはジャ・ジャンクー史上最強かもしれない。世界ミニチュアパークのダンサーと警備員カップルの悲劇を描く。群像劇になっている。嫉妬深いカップルで女にフラれかけたら、自分の服に火をつけて引き留めていた。

バービー
丸ノ内ピカデリー
マーゴット・ロビーの見た目があまりに整っているので、却って引っ掛かりとして魅力に感じないと以前から思っていたが、自らのプロデュース作品で「定番モデル」とすることで自分に対する批評性を発揮するのはすごい。ライアン・ゴズリングも40歳超えていて、そろそろ若者役は難しいがあえて、ケンの役をやり自らの加老をユーモアにするのは素晴らしい。50過ぎの男性と仕事しているが、皆おでこに横線のシワがつくがそれを強調しているのが面白い。また、筋肉Tシャツのような肉体にしているのも面白い。大枠楽しめたのだが、脱洗脳の為に原理研究会親鸞会のような手法を使っていいのかと去年読んだ「」や「」を思い出してしまう。一人になった時に連れ出して取り囲んで徹底的に言って聞かせるってどうなんだろう。オルグ手法の問題か。ケンは属性から離れて「自分を探そう」、「自分と向き合おう」という展開もあまり好きになれない。自分と向き合っているうちに自らの特権保護に躍起になってしまわないか、或いは更に突き進んで被害者意識に飲み込まれてしまわないか憂慮してしまう。実際に上記のような状態になる人は、自分と向き合った結果に思えてならない。


スイート・マイ・ホーム
TOHOシネマズ川崎
斎藤工がシネフィルというのは、なんとなく聞いていたが、吉田伊知郎の「映画評論家」のなかでメイクの間や移動時間も映画を観ていると聞いて、その視聴態度はどうなんだろうと思っていたが、今回は文芸ホラーとのことで、彼のスキルがより分かりやすいような気がして鑑賞。前半は決定的なシーンを見せないで、後半に見せるのは抑制が効いていて良い。モデルルームでの男との取っ組み合いでの照明も良い。前半30分が何も起きないとも言えるが、それでも充分見せられるのが確かな腕。全体に地味めな語り口だが、評価したい。

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
チネチッタ川崎
同じ場所に位置する二人を切り返しで見せるのがとても不思議。切り返しはだいたいカッコ悪いと敬遠してしまうが、クールさは失わない。

ステロイド・シティ
TOHOシネマズ川崎
ウェス・アンダーソンは自分に飽きて、前回の新聞や今回の演劇、写真など、映画のなかでマルチメディア化を進めている。それでもどこか、おとなしく収まってしまっている。是枝裕和も自分に飽きて韓国や他人の脚本で自らを刺激している。ダルデンヌ兄弟は社会テーマを変えながら撮っている。この二人から考えると社会テーマを描くのは映画原理主義者にはバカにされやすいが、キャリアを考えるとずっと新鮮でいられるのかもしれない。ウェス・アンダーソンは社会テーマを嫌うので今後どんどん詰まっていくような気もする。皆がウェス・アンダーソン風を楽しむのも黄色信号に思える。自らのスタイルが陳腐になった後にウェス・アンダーソンは何をしたくなるのかが気になるので、どんどんウェス・アンダーソンスタイルを消費してしまったほうが面白くなるような気がしてくる。学級新聞で世紀のスクープという流れがあるが、ウェス・アンダーソンってそういうの好きだよなと思い出させてくれた。キッズが大人を狼狽えさせるという展開こそが、おっさんの子供ロマンに見えてしょうがない。頭の良い子供というジャンルに対するフェティシズムが私に全くないのでよくわからない。

こんにちは、母さん
TOHOシネマズ川崎
やっぱ、山田洋次って凄い。ウェス・アンダーソンやクローネンバーグなどの映像文法が特殊な監督の作品を立て続けに観たあとなので余計に染みてしまった。体の一部は写しながら、口や顔は映さないという画面から切り出す手法を効果的に入れることで、妙な緊張感を作り出している。クドカンが上司と揉み合ったあとのドア付近の緊張感が特に凄い。足フェチシーン出てこないなと思ったら、上履き作製シーンで炸裂してた。吉永小百合のアップは最後までとっておき、昔語りのシーンでは、ロングショットで抑制を効かせる。それでも吉永小百合が息子を「お前」というとき、板に付いていなくて心地が悪い。また、クドカンは最初不安だったが、あえて下手っぽい演技を狙っているような気もしてきた。まだまだ元気に映画を作り続けるような気もする。神保町シアター山田洋次特集をやって欲しい。それにしたって、老人向けだなぁとはやはり思う。松竹で生き残った92歳が組織批判をするのも考えてしまう。むしろそのサラリーマンスキルを盗みたい。以前に映画業界の方から聞いた話だが、松竹本社には山田部屋があるらしく、その部屋は社長室よりもデカいらしい。確かに会社への貢献を考えると山田洋次に何か言える人なんて入るわけがない。


MEG the monster2
TOHOシネマズ川崎
ステイサムのサメ映画のパート2かと思って、映画ドットコムを眺めていたら、あの怪作「ハイライズ」を作ったベン・ウィートリーが監督とのことで気になっていた。それに公開後の反応はジャンル映画して楽しめたという反応が多いので、更に気になった。しかもこの映画米中合作とのこと。更に気になる。中国人のおっさんがそんなに分かりやすくカリスマを感じるようなルックスではないのだが、それが却って親しみを感じて心地よい。タコが出てくるが、そこについて特にセリフであれこれ説明しないのが潔い。観りゃ分かんだろ。デカいタコだよ。とスクリーンに語りかけられた。ベン・ウィートリーは職人監督としても優秀なようだ。

禁じられた遊び
109シネマズ川崎
中田秀夫の前作「"それ"がいる森」の物語スピードに驚かされ、中田秀夫の映画は見逃せないと思うようになり今回も鑑賞。主演はジャニーズwest重岡大毅ですが、エンドロールまでジャニーズと気付かないぐらいちょっと地味、良く言うなら渋い。年齢も31歳らしいので落ち着いていても驚かない。それと橋本環奈。呪いのキーマンとなる重岡の死んだ妻がさっぱりした顔立ちでホラーっぽいと思っていたら、この方がファーストサマーウイカさん。お名前は聞いたことがありましたが、こんなにホラー映えする方とは。長谷川忍演じる大門という霊媒師のキャラクターがチンピラっぽくて面白い。楽しかったけれど、「それ森」に比べるとちょっと鈍重に思えてしまう。


私はモスクワを歩く
シネマヴェーラ
中村登特集に通ったせいか、ウェルメイドで緩い若者のアレノレとして見えた。風景ショットが良い。

戦艦ポチョムキン
シネマヴェーラ
これがあのポチョムキンですか。これが噂の階段かと関心しますが、ハマりきれなかった。

幸福
シネマヴェーラ
完全サイレント上映。アクションや屋根上の馬を下ろすトリックなど、楽しい。甲斐性のない男と馬力女性夫婦の奮闘記。

圧殺の丘
シネマヴェーラ
前半の食料補給任務のコンビから、後半は死ねない裏切り者の男の実存を描く。男二人の熱い関係を描くので、BL好きは好きかも。

女囚701号/さそり
国立映画アーカイブ
ぴあフィルムフェスティバルの一環として上映。アルノー・デプレシャン梶芽衣子がアフタートークするとのことですが正直言って、女囚さそりシリーズについてもデプレシャンについてもほぼ知らないけれど、映画友達に教えてもらい行ってみる。撮影と照明が特徴的で、縦で人物を撮ったり、不思議な空間繋ぎなどが面白い。さそりシリーズがどこかで特集されていたら観てみたい。梶芽衣子トークがで、アップが欲しいのでセリフ無しで撮ってくれと要求したなど、役者ならではの目線を披露してくれた。確か、成瀬巳喜男増村保造への敬愛なども語ってくれた。


ふれる
国立映画アーカイブ
ぴあフィルムフェスティバルを先週観たので、折角ならコンペ作も観てみようと思い鑑賞。ずいぶん大人びた映画で多分撮ってる監督も大人かなと思いきや、まだ大学生とのこと。シネスイッチ銀座とかで上映できそう。

リバーシブル
国立映画アーカイブ
こちらもぴあフィルムフェスティバルコンペ作。こっちの方がオフビートユーモアを志向しているが、後でチラシを見掛けるとメンタルヘルスを扱ったとのこと。主人公のおっさんの喋り方のおかしみで乗せてくれる。

リテイク
国立映画アーカイブ
ぴあコンペグランプリ。尺が110分だが、停滞をやけに感じる。グランプリ作品は東京国際映画祭で上映されるらしいが尺で評価されていないか。ダラダラした長尺より、短い尺で完成度が高い方が私は評価する。

ダンサーin paris
ヒューマントラストシネマ有楽町
クラビッシュっておばさんが好むフランスイメージを担っている気がして前作まで観てなかったが、前作の爽やかな映画で重要なことに気付き、今作も楽しみにしていた。確かにおばさん向けなのかもしれないが私がおばさん化しているのかもしれない。前作のラストでダンス教室で出会うという終わり方なのでそこを引きずるようなテーマで面白い。

希望のかなた
ヒューマントラスト有楽町
相変わらずアキ・カウリスマキの撮り方だが難民について描いているが、どこかおかしいのはかわらず。劇中のポーカーがあまりみたことないルールだった。酒瓶で殴るシーンは待ってましたと思えばいいのか。



どこまでもいこう
目黒シネマ

塩田明彦がメジャー会社と関係良好だった時期を知らないし、観ないまま年を取ってしまった。客は正直あまり多くないので第2回塩田特集は難しいのかもしれない。客ってどうしてももう死んでいたり、伝説になってる監督の特集を見てしまう。生きてるうちに評価を検討する機会があった方が良いに決まってる。スクリプターに映画研究者で「姫とホモソーシャル鷲谷花の名前を見掛けた。人に歴史あり。「sharing」では河野真理江の名前を見かけたが、そんなのも面白い。どんな役職か忘れてしまったが大石始の名前も見掛けた。永山・多摩センターでロケをしているので見覚えのある風景が懐かしい。バッドボーイの服が懐かしい。子供が行き交うのが面白い。
 

月光の囁き
目黒シネマ
主演の水橋研二が知り合いに似ている。ヒロインのつぐみが後半グイグイ引っ張ってくれる。前半の付き合ってすぐの頃に自転車が奥から突っ込んでくるのを流しの右から左の移動カメラで追い掛けるのが気持ちいい。エロい気持ちを複数で持ち合わせておく方が枯れないのかもななど思っていた。その後AVなども出演したつぐみは現在連絡が取れないらしい。旅先での草野康太の薄手のデニムシャツがカッコいい。

さよならくちびる
目黒シネマ
小松菜奈門脇麦成田凌の三人の解散に向けた音楽ロードムービー。同じ曲を繰り返しひとつの映画で聞かされるとクドくてダルくなってくるがあまりそう思わないのは、秦基弘博とあいみょんの曲がそれだけ強度があるということか。日本の音楽映画でちゃんと役者に歌わせているのも良い。ただ、タバコ、ジーンズ、キリンビールって30年ぐらい前のミュージシャンイメージのような気もするが確かにそんな人が今でもいるので問題なし。小松菜奈が特にだけれど、ミュージシャンが性的に緩いイメージも確かにあるので問題なし。2人の音楽が妙に泥臭いと思ったけれど、ちゃんとプロに依頼しているので打つべき対処はしているか。持ち曲が少なく5回以上聞かされるがあまりつらくないのは、それが曲の魅力かもしれない。

バーナデットママは行方不明
109シネマズ川崎
前に観た歴史モノのベネデッタと同じ名前のことに途中で気付いた。昔ママにロケットをあげたというけど、あのディルドのことかな。リチャード・リンクレイターはもちろん大好きだけれど、最近は配信らしくて観れてなかった。前半がはてな匿名ダイアリーっぽい。しっとりした感覚が気持ちいい。ケイト・ブランシェットの最近のtarよりずっと私は好きだ。自分を探そう、見つめ直そうというのが、この家族全体のコンセンサスとなっているけれど、そんなことを言ってられるのは余裕があるからじゃないかと冷めた目で見てしまうのは私が平民だからか。


青いソラ白い雲
DVD
金子修介が震災をテーマにすぐ撮った作品。金子修介がブログに予算をこっそり明かしているが、そんな予算でも仕事を受けるなんて頼りがいがある。震災を描いた作品だとどうしても重たくしなければと思い込むし、確かに重いのだけれどそんなテーマをユーモアで処理できるなんて。


アル中女の肖像
ユーロスペース
谷哲也トーク付き。ウルリケ・オッティンガーの映画はファスビンダーのような圧迫感がないと評していた。更に当時のドイツの映画シーンでは、左翼とフェミニズムが中心的でオッティンガーはどちらからも軽視されてしまったとのこと。それも頷ける。どちらの要素も前面化させない。イデオローグやアイコンになるのを避けるのが気持ち良い。衣装がとにかく面白い。主演のタベア・ブルーメンシャインが手掛けているそうだが、この真似をする映画が出てきそうな気もする。私が好きなのは全身ギンガムチェックの研究者だが画像を張れない。


DOA DEAD OR ALIVE 犯罪者
国立映画アーカイブ


ジョン・ウィック コンセクエンス
シネマサンシャイン平和島
上映まで少し時間があったので麻雀格闘倶楽部て時間を潰していたのだが、麻雀やりながらエロ動画を鑑賞している人が居たが、単にエロ動画を観る人も居るのかと感心してしまった。映画は長尺なせいもあってダレるところもあるけれど、アイデアが多くて楽しめた。自分がちゃんとリアルタイムで追いかけられているシリーズ映画って、これとキングスマンぐらいのような気がするのでちゃんとファンになりたいけれど、そこまでな距離感は変わらず。

カナリア
目黒シネマ
塩田明彦は子供の演出が上手いなとやはり思う。「月光の囁き」でも思ったが女優をちゃんと輝かせる。この映画でもヒロインが最初からグイグイ引っ張ってくれる。どなただろうと思ったら谷村美月。若き日の江口のり子が元信者として出演している。オウム論としては、宗教や組織というより2世問題の色合いが強い。夫が死んじゃってから宗教にはまるのも山上の経緯など今でも聞くしな。日本映画

の暗さが前に出過ぎているような気もする。
 
害虫
目黒シネマ
不登校少女が茶髪の不良と出会ういかにもな展開。この時点でちょっと食傷気味。パスカルズ石川浩司が出てくると一気に画面が楽しくなる。良い笑顔が観れる。カナリアも含めて援助交際が取り上げられるが、妙に時代掛かって見える。火炎瓶を投げ込んだのは、自宅と考えていいのかな。娘があんなことになっているのに、自分のペースで倒れこむりょうがきつくてしょうがない。
 
麻希のいる世界
目黒シネマ
義理妹が好きになったら、どうするんだろうとつくづく思う。好きになられるのもキツいだろうし。ラスト20分でのアンプ殺人未遂、鑑別所行き、声が出ないの急展開マシマシはどう捉えればいいんだろう。急展開で三者どう出る展開は好きなんだけれど、ちょっと一気に進めすぎな気もする。それにしても、塩田明彦は二人の人間が並んで歩く時の演出が気持ち良い。特にこの映画の新谷ゆづみと窪塚愛流が並んであるく、多分ロケ地は八王子みなみ野あたりの周りに何もない知ってる道かと思うがそこで、話し合いを持ち掛ける窪塚に対して新谷が自転車を倒すシーンの気持ち良さ。新谷ゆづみは、「やがて海へと届く」、「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」での好演で知っていたが、どこか手堅いというかしっかりした人の諦観みたいな雰囲気がとても良い。落ち着いているってことか。
 
海外映画
新作7本
旧作8本
計15本
 
日本映画
新作6本
旧作8本
ソフト1本
計15本
 

合計30本