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映画ログを中心にしております。映画館での鑑賞が中心です。旧作より新作が過半数を超えるのが方針としてます。

松竹大船撮影所前松尾食堂/山本若菜

松竹大船撮影所近くの松尾食堂の山本若菜さんが松竹のスタッフや役者について書かれた本。
松竹マニアには堪らない。どんなこともアケスケと書いているが、当時のスター役者がどのように食事を
取っていたかなども面白い。
私のフェイバリットである渋谷実は、弁当を持ってきて勝手に食事を取るなど、
一般的なマナーから考えるとご法度なことも随分していたらしい。また、この本以外でも証人のいる
木下恵介との不仲説を裏付けるエピソードも
面白い。また、渋谷実は婿入り養子に入り助監督時代から改姓をしたなども面白い。

終盤でわかるのだが、著者は松竹のプロデューサーと愛人関係にあったとのこと。このことを知ると
スタッフや役者のこの店での態度もどこか政治的に見えてくる。会社のプロデューサーと愛人関係にある
人の店に行くのは普通に考えて気兼ねなく食事をとるのとは訳が違う。会社で上司に行きつけに連れて
行ってもらったら誰だって猫を被る。あるいはかえって生意気な態度をとることで可愛がられるなども
考えられる。
佐野周二はもちろん大好きな俳優だが、芝居での気弱だがジェントルであることを崩さない態度とは 裏腹に著者に対してお尻を触るなどしていたとのこと。今後、佐野周二を見る目が変わってしまう。 松竹の表の歴史ももちろん大好きだが、会社組織として派閥争いの臭いも漂ってくるのも 面白い。映画は表現だが、前提として産業である。また、この食堂は山田洋次の「キネマの神様」で 永野が働いている設定になっており、その結婚を見守る出水宏をリリー・フランキーが演じている。 この出水とは清水宏がモデルのようだが、この清水宏は助監督に対する暴力がひどかったらしく 木全公彦「異能の日本映画史」に詳しい。