TはTOKYOのTのブログ

映画ログを中心にしております。映画館での鑑賞が中心です。旧作より新作が過半数を超えるのが方針としてます。

2023年8月鑑賞映画

 


真夜中の虹
目黒シネマ
カウリスマキ初体験。もっとショット長いタイプの監督かと思ってましたが、サクサクかなり早い。物語の進め方が早い。1シーンは多くても3ショットぐらいか。へちゃむくれたおっさんの地味な人生を淡々と描く。

パラダイスの夕暮れ
目黒シネマ
スタイルチェンジはあまりしないらしく、撮影編集のフィロソフィーは上記と変わらず。淡々とした恋愛?模様。あまり前触れなく倒れたり、さっくりボコられてしまったりする。それでも構図のこだわりは強い。けれどあっさりした切り口はダルデンヌ兄弟を思い出すが、ダルデンヌよりは政治テーマを前面化させないか。キャリア年齢で言えば金子修介黒沢清と同じぐらいか。あと音楽が割と流しっぱなしなのも、特徴かもしれない。ジム・ジャームッシュとかも近い位置かもしれない。

ドクトルマブゼ
シネマヴェーラ
シネマヴェーラに向かう途中で孫GONGとすれ違った。主演が日本で言うなら市村正親をもっと崩したような顔だった。長尺チャレンジ峠のサイレント部門代表作。フリッツ・ラングはまだまだ観たい。音楽もとても良い。経済犯罪と賭博がメインだが、テキサスホールデムとも違うのかな。

ロマンス
国立映画アーカイブ
ラサール石井玉置浩二と聞いて不安に思ったが、とても良い。ラサール石井って若い時カッコ良かったのかと思いきや、全く変わらず。体型、私と同じようにも思える。主演二人に役者を使っていないので、ブロークンな作品かと思いきやとてもウェルメイド、玉置浩二ラサール石井の会話だけで魅せる。ウォッカアロエジュース割りを飲んでみたがあまり推奨できない。撮り方もオーソドックスで心地よい。ヒロインの水島かおりは監督の長崎俊一と結婚しているそう。後で気付いたが隣の隣ぐらいの席に3人家族がいたが、恐らく本人達ではないか。玉置浩二は「ふ・た・り・ぼ・っ・ち」でも素晴らしい演技をしていたので、こんなに続けて良い演技を出きるなんて。という話を飲み屋でしたら、そんなの皆知っているとのこと。

死んでもいい
国立映画アーカイブ
男向けメロドラマ。大竹しのぶが室田日出夫と結婚するセンスの良さにまず感動する。永瀬は当時だいぶ登板回数多かったが、この映画では室田に貫禄負けしてしまっている。室田は大竹が不倫をしたことを分かっていながら、大竹を愛人という体でラブホテルに行こうと誘うなんて気が利いている。映画のなかで「妻の不倫に気が付いたらどうする」という展開の正解のような気がする。大竹しのぶの魅力が爆発している映画と思ったが、知り合いの女性は石井隆本人に「大竹しのぶはミスマッチだった」と言ってしまったことがあるとのこと。誰が見たってエロい雰囲気の女性だとなんだか、ダサくなりそうな気もする。雨の表現は映画史でも屈指かもしれない。雨の大竹しのぶに心奪われ、襲う。この映画自体ポルノっぽい見方でいいのかな。

ベネデッタ
キネカ大森
キリスト教映画ってどうしてもあまりピンと来ないことが多いので避けていたがキネカ大森で上映されるなら見てみようと思い鑑賞。組織政治とイカサマの関係が素晴らしい。「虚空門GATE」や「職業欄はエスパー」それに「白い巨塔」にレズビアンを合わせたようなかなり盛りだくさんな内容。シャーロット・ランプリングの政治的手腕も見所。しかし、娘に政治的センスはなかったか。クーデターのような武力制圧にしたって根回しは重要だ。ベネデッタ自体が「虚空門GATE」の主人公を思わせる木の破片が気になるラストも素晴らしい。

すべてうまくいきますように
キネカ大森
劇中の「金のないやつはただ死を待って哀れに死ぬだけだ」という言葉があったが、人類のだいたいはそんなような気もする。「PLAN75」は仕事を探している状態で死を選ぼうとするが、この映画ではもう病魔に犯された状態で死を選ぶ。前も書いたが人生を減価償却的に捉えているので、85歳が死ぬのも別にいいかなと思ってしまう。

我が人生最悪の時 THE MOST TERRIBLE TIME IN MY LIFE
シネマジャック&ベティ
1994年公開。昨日「死んでもいい」と合わせて観ると正直言って永瀬正敏の下手さというか魅力のなさが目立つ。それかあまり男性受けするタイプではないというだけかもしれない。この映画期待していたが、なんだか物足りない。ジャンルとしては大好きなはずなのに。

リボルバー・リリー
109シネマズ川崎
良い映画だと逆に良くなかった点が目立つが、マンホールで襲ってきた陸軍の演技が浮いているように見えてしまったのが惜しい。長谷川博己のかしこまったジェントルな態度が時代掛かってマッチしている。前半の役者の動き、カメラ位置が気持ち良い。アクションもとても流麗で気持ち良い。ベスト入るレベルかもしれない。大正時代ということなので、老人が多そうなのに若い女性が多いのはなんでだろうと思っていたが、ジャニーズが出てきて納得した。女性のファンはちゃんとフェイバリット俳優が出る作品を劇場で観ている。

マイ・エレメント
TOHOシネマズ川崎
アニメーションの表現がユラユラ、プルプルしていて観ているだけで楽しい。抽象的なのにどこか泥臭いのがしっくり来る。


トランスフォーマー ビースト覚醒

TOHOシネマズ川崎
なんだかあまり引っ掛かりがないまま、終わってしまった。



エドワード・ヤンの恋愛時代
TOHOシネマズシャンテ

スマートウォッチをしている人が隣だったので、上映前にしまっておくように釘を刺したが、外国人なのかわかりませんがいちいちスマホをつけて時間を確認して鬱陶しかった。恋愛群像劇でテーマはやはり、豊かさの次は何か、大体どの作品でもエドワード・ヤンはこれをテーマにしているように思える。浜口竜介がコメントを出していたが、「PASSION」の元ネタはこれか。暴力からセックスに流れるのはこれを参照したのかな。エレベーターのラストが最高に気持ちいい。ちなみにミンというキャラクターが田村高廣に似ていた。

 

20本

 

 

海外

新作4本
旧作4本

計8本

 

日本
新作1本

旧作23本

計24本
合計32本

生誕110年記念 映画監督・中村登 女性賛歌の映画たち全作

 神保町シアターで嬉しい特集上映が開催される。「生誕110年記念 映画監督・中村登 女性賛歌の映画たち」を知った時から、この特集は全て観るつもりでいた。そんな気合いが入っている理由としては恐らく2021年のシネマヴェーラ新珠三千代特集で「惜春」を観て色使いとメロドラマに感動して今後は中村登の作品を見逃せないと決心した。「惜春」では衣装に鳥居ユキyuki toriiが入っていることを記録しておきたい。そこで今回の特集に通いすべての上映作品を記しておく。


(日本映画史でのマッピング
 そもそも日本映画史での位置づけを観てみよう。以下「日本映画作品大事典」から抜粋。
中村登1913-81(大正2-昭和56)
東京・下谷生れ。3歳の時、歌舞伎の台本作者だった父が死去し。母の再婚先の清元崇の家に育つ。東京帝国大学文学部を卒業した1936年、新設された松竹大船撮影所に入社。助監督として島津保次郎吉村公三郎らに就く。41年、文化映画「生活とリズム」の後、「結婚の理想」で劇映画を初監督する。戦後、その端正な演出が会社に認められ、幾多の文芸大作映画を手掛ける。撮影の成島東一郎、編集の浦岡敬一、脚本の権藤利英、音楽の武満徹らと組み、頂点となる作品を次々生み出す。撮影現場ではそのエネルギッシュぶりから牛若丸とあだ名され愛され、スタッフ、キャストの職能を最大限に活用する聡明さに特徴がある。初の日中合作映画「未完の対局」(佐藤純彌、82)の準備中に闘病生活に入った後、死去。

これだけでは不十分なので更に文献に当たってみよう。以下「日本映画テレビ監督全集」(1988、541p)

中村 登
 1913年8月4日、東京下谷上根岸に生まれる。幼い頃から浅草六区の映画街に出入りし、36年東大英文学学科卒業と同時に助監督試験を受けて松竹に入社、大船撮影所で斎藤寅次郎島津保次郎らにつく。当時吉村公三郎渋谷実、原研吉、大庭秀雄らが相ついで監督に昇進したあとであったが、斉藤(原文ママ)、島津らのベテラン監督が東宝に転出し、小津安二郎の応召などもあって、41年監督に昇進、文化映画一本ののち劇映画の監督となる。戦後池田忠雄との共同監督で急拠(原文ママ)仕上げた「お光の縁談」が比較的好評で、以来平均的な松竹現代劇の製作をつづける。演出スタイルはこれといった個性がなく、力作には乏しいが、つねに水準以上のしごとはしている。三島由起夫(原文ママ)原作によるカラー初期「夏子の冒険」は色彩の生かしかたに工夫が認められ、岡本綺堂作の「修善寺物語」を坂東葦助(三津五郎)の主演で映画化したのも注目された。以後原作に恵まれ、舟橋聖一の「白い魔魚」永井荷風の「つゆのあとさき」、井伏鱒二の「集金旅行」、丹羽文雄の「日々の背信」などに取組むが原作を生かしきれなかった。このなかでは「集金旅行」が軽妙な味をだし以後シリーズ化される。63年川端康成原作の「古都」を発表、岩下志麻の二役で双生児を登場させる物語のユニークさと京都の季節ごとの美しさを織り合わせて秀作とした。曽野綾子原作の「二十一才の父」も佳作だが、66年有吉佐和子の大河小説を映画化した「紀ノ川」は司葉子から明治、大正、昭和に生まれた女として力演をさひきだし、ようやくヴェテラン監督の風格をみせた。その後「惜春」「智恵子抄」など佳作を重ねたが、その後は晩年を飾る企画に恵まれなかった。81年5月20日死去。(登川登川直樹



1988年の出版物でも誤字が目立つというのが、まず印象だが、「個性がなく、力作に乏しい」という評価は悲しい。けれど「つねに水準以上」というのは頷ける。

更に日本映画評論の指標であるキネマ旬報の年間ベストで確認すると1966年に「紀ノ川」で3位、1967年に「智恵子抄」が6位なので監督生活20年を越して来たタイミングで評価が高くなったともいえる。 

 

(雑誌特集記事)
国立映画アーカイブで雑誌記事をコピーして調べた。キネマ旬報はつくづく長寿雑誌だと感心させられる。

 

キネマ旬報815号1981年7月上旬号 「追悼中村登吉村公三郎、成島東一郎2P
ちなみにこの号では追悼特集として、川喜多長政も取り上げられているが4p割かれている。分量自体がが雑誌の評価を示しているとも考えられる。同じく島津保次郎の助監督を務めた吉村は、中村の家系、環境を記す。実父は榎本虎彦という狂言作家だが、登が生まれてすぐに亡くなってしまい、歌舞伎材の大谷社長は芝居茶屋の経営を登の母に手伝わせ、三味線弾きの青年と結婚したようである。また、成島東一郎は「古都」撮影現場で岩下志麻の夕立のシーンの後に濡れた衣装のまま製作・助監督がフォローしておらず待たせていた際に中村が激怒した思い出を記す。

 

キネマ旬報1355号2002年5月上旬号 「女性映画の名匠 中村登の世界」野村正昭 3p
2002年当時は三百人劇場というシアターで(私は初めて知った)中村登の作品が42本が一挙上映されたそうで、そのタイミングに合わせた特集記事のようである。筆者は高校時代に試写で中村本人の晩年に出会った時の思い出から始まるが三軒茶屋ams(これまた知らない映画館である)の96年2月開催特集上映で魅力に気付いたとのこと。三百人劇場では「いたづら」(1959年)、「いろはにほへと」(1960年)などの神保町シアターの今回の特集では組み込まれなかった作品がおすすめとのこと。




今回の神保町シアターの特集で観た作品を記録しておきます。


智恵子抄(1967)
丹波哲郎の演技が堅いがそこが映画の文芸的格調に繋がっているような気がする。最近見た「死の棘」と似た「妻が精神病になった映画」でしたが、「死の棘」のストイックな芸術を目指す態度というよりは出会って死ぬまでを描く大河ドラマ感が気持ち良い。色使いが心地よいのは、やはり中村登の映画の特徴か。画家でもある妻を演じるのが、岩下志麻なのだが、岩下志麻の精神病患者の演技はそこまで珍しくないが、あっさりした表情になっていく。決定的なシーンとして、夫を馬乗りして「走れー光太朗!」といい出す。この夫婦が風呂場で桶を叩いて決定的に共鳴していく演出と石立鉄男演じるタロウが自らの元を去った女性に向けて一斗缶を叩いて探すエピソードが美しい。智恵子抄」 | L'important c'est d'aimer


春を待つ人々(1959)
父の選挙ボランティアを機に家族が集まるホームドラマ佐田啓二の関西弁が心地よい。撮影が小津安二郎組の印象が強い厚田雄春(ゆうはる)。伊藤雄之助が画家仲間としてチョイ役で出てくるのが嬉しい。愛人妾問題が浮き上がってくるが、そこをキレイにいなしていくストーリーがキレイだが、キレイすぎやしないか。それにしても選挙に負けた佐分利信に対して取り巻きの当選できない候補者は用無しであるという冷たい態度への目線が鋭い。

鏡の中の裸像(1963)
和子を演じる桑野みゆきがだいぶ可愛い。美容師の女性3人の分岐を見つめる。チンピラ役の田中邦衛のボーダーのシャツがとにかくカッコいい。下宿先の青年から見ると都合の良い手のひら返しに苛立つが、本性なんて本当にトラブルが起きないと分からないのかもしれない。川津祐介演じるヒモ男もしょうもない。神山繁の頭皮の薄い臑齧りの息子も憎くて良い。また、山本圭が足が不自由で世を斜に見る青年をここでも演じている。

爽春(1968)
岩下志麻が嫁に行かず、父親と二人暮らしだが、実をいうと彼のロンドン駐在に際して別れた元彼と不倫関係にある。友達の女子大生のバイト先工面をしてあげる、その女子高生とは家族ぐるみの付き合いがある。ラストの方では父親同士が喧嘩をしてしまうが、そこでたまたま、夫婦交換をして仲直りをする。森光子が素晴らしい。あんな不倫関係を解消させるには、娘をそれなりに遊ぶ環境に置くしかなく、それを考えるとバーで仕事をするのはソリューションとして秀逸に思えてくる。終演後におじさんが、「長崎旅行にサラリーマンがつきまとうところで(ストーリーが)崩壊した」と言っていましたが、彼はアフリカ出張から帰ってきて長期休暇を取るように会社から言われていたので、一応は筋が通っているが、そう思ったのなら一観客の評価とさせていただきます。更に「そんなんだから他の劇場で掛かってるのを観たことない」との評価でした。


明日への盛装(1959)
冒頭から明仁・美智子が恋愛結婚であるニュース映像から入る。モノローグを多用しているのも珍しい。実際は恋愛結婚と言っても日清製粉の令嬢なので平民とは言えないが。とにかく面白い学習院コメディ。飲み屋で学習院卒の人からこんな名家がいたという話は聞いたことがある。美容院の娘である岡本チカ子(高千穂ひづる)がこっそり学習院がモデルの修学院という宮様系大学に入る。登場人物は左官の娘で社会運動をしている夏目純子(芳村真理)、正真正銘のお嬢で盗癖のある公子(中圭子)、メンズは大木実演じるいかにも根性の無さそうなぼっちゃまの多助、本当にホテル王の息子だけれど、どこか泥臭い雰囲気もある伍堂(杉浦直樹)、そしてたまたま汽車に乗り合わせた高倉明夫(石濱朗)。撮影で速いパンを使うのが中村登には珍しく思える。チカ子が家柄を調査されていることを知った時の失望でカメラが斜めになる表現が面白い。チカ子は元から愛がどうのとかより、ぼっちゃまを見つけるのを目的にしている。この映画自体が男を見る目とはなんなのかというテーマを描いているのが面白い。確かに女性は男性をどのような評価軸で見るのだろう。


恋人(1960)
タイトルが直球だが、受験を機に信州から出てきた4人組が先輩の医者の自宅に下宿して、桑野みゆきと出会う。主人公の山本豊三は「惜春鳥」ではゲイ役を演じていた。眉毛が太いがどこか柔らかい印象を受ける。桑野の兄を怪我させてしまい関係が微妙になるが、兄が山本の判断は間違っていなかったことを主張して仲直りする。桑野のファッションはいつも良いがこれでも素晴らしい。


紀ノ川(1966)
冒頭の成島東一郎によるクールだがずっしりした川の撮影と、武満徹ハンス・ジマーヨハン・ヨハンソンのテクスチャー系を先取りしたような音楽が最高に良い。冒頭の嫁川下りから興奮する。内容としては、土着×家系なので「鬼龍院花子の生涯」を思い出すがこちらの方がずっと上品だ。上品さ故に後追い世代の人が面白がる要素も少ない。字幕で日本社会の出来事もたまにでる太字で「日本共産党結党」と出るので鬼龍院のように娘の岩下志麻が活動家の山本圭と結婚するのかと思ったがそうではない。田村高廣はオーセンティックな男性像だが、丹波哲郎が世をすねた弟。田村の息子が人生に絶望したまま終わるのがなんとも物悲しい。1966年でもこれだけの映画を作れたのかと思うが撮影と音楽、演技どこをとっても素晴らしいが女性三代を渋く描くのであまり若い人向けでないのかもしれない。


わが恋わが歌(1969)

全体から溢れる男性原理的な態度が前時代的である。後釜ものは好きだが、歌人先生が若い後妻に威張り散らしてるのが、リアル過ぎて楽しめない。若かりし頃の緒形拳が私塾の弟子である山口瞳を演じている。



二十一歳の父(1964)
いがみ合っていた親子が理解しあえるかと思いきやとんでもない方向に進んでいく。最終盤の山本圭がある決断をしたと思われる食事シーンは自分の見た食事シーンでベスト級のカメラワーク。演技としても山本圭のベストアクトかもしれない。兄を断罪するでもない山本圭の品が良いがすねた態度も素晴らしい。誰に勧めても良いと言って貰えそうな作品である。

我が家は楽し(1951)
堂々としたファミリードラマだし、イメージとしての松竹大船調ど真ん中な作品。中村登が監督になって十年経ち、この映画で評価されたと聞いたが、それを聞きつけてか満員。役者も山田五十鈴笠智衆高峰秀子佐田啓二と豪華。カメラ、編集、演技すべて素晴らしい。母親が娘に自分の志した芸術を託すというストーリーは娘がグレてしまわないか心配になる。

河口(1961)
名作と名高くタイトルの印象からずっしりした重たい映画かと思いきや、男遍歴ジャンルだった。山村聡の役が不気味で頭が切れる男だ。実際に頭が切れる人はどこか気味が悪かったりする。山村聡が演技のタメや受けで笑わせてしまうのが素晴らしい。

結婚式・結婚式(1963)
川津・山本圭という好きな役者の夢の共演が観られる。山本圭仲代達矢の本俳優座で同期だったが、素でひねくれた人格だったとの証言があるけれど、中村登の映画のウェルメイドな作風とも合う。川津・岩下志麻岡田茉莉子田村高廣、更には国際結婚が出てくる。「わが恋わが歌」でも国際結婚を取り上げていたが、当時は国際結婚が話題だったのか。意外と今の日本映画で国際結婚を描くものはそんなに多くない。単に珍しくもないということか。全体として食卓の会話で引っ張る映画だが、そこのユーモアやギャグ(差別も少々)が今回の特集で一番笑いを取っていた。笠智衆が故人役で写真に出てくるがそこもウケていた。

暖春(1965)
京都在住の岩下志麻が気分を変えるために東京を訪れるが、やはり京都の生活、そして身近な男(長門博之)が良いと思い知り、結婚する。岩下志麻は父親が小さいときに死別しているが、当時の母は3人の男と交際があった為、本当の父は別ではないかと考える。母の交際相手の人物を訪ねるがやはり、自分としては、そもそも自分の父親は死別しているかと思い直す。

日も月も(1969)
緊張感のある冒頭の不穏な音楽からしてワクワクしてくる。岩下志麻の母が出ていき、父と暮らしていたが、父が死亡して、母親とその彼氏と生活を始める。一瞬だけ回想が出てくる。編集で引っ掛けを作ろうと思ったんだろうが、あまり上手くいっていなようにも思う。

女の橋(1961)

恋多き芸者のあれこれについての映画。田村高廣が狡猾だけれど、ジェントル。田村の後釜として藤山寛美のラブシーンが観られる。愛人の悲しさ、正妻ではない悲しみを描くのが当時の一大ジャンルだったのか。今回の特集でも多い。

夜の片鱗(1964)

照明の鮮やかさやアイデアの豊富さがとんでもない。平幹二朗の若い頃を見掛ける度に誰かに似ていると思っていたが、芸人フルーツポンチの村上だった。
俳優・平幹二朗さん 写真特集:時事ドットコム

村上健志 - Wikipedia
並べて観てもやっぱり似ている。

あの人は私が居なきゃダメなのよという展開の映画では一番残酷でエグい。音の付け方が抜き差しが独特で、救おうとする客と工業地帯で会うときにやけに大きい工業音がする演出も面白い。とあるショッキングなシーンを直接は描写しないが、ゆっくりと時間が流れる。この手のシーンのなかで指折りの嫌な時間の流れ方。


土砂降り(1957)
神保町シアター
側妻家庭の物語。親の出自を調査により婚約破棄されてしまった岡田茉莉子佐田啓二だが、岡田茉莉子が神戸でホステスをしていることを聞きつけて、収賄により東京を追われて身を隠す。当時はビールって泡ほぼなしで飲んでたのか。


斑女(1961)
神保町シアター

北海道から義理の弟(旦那の弟)と駆け落ちのようにして出てきた岡田茉莉子がホステスとして、世界の残酷さを学ぶ。オンリー(一人の男の相手をする当時の業界用語?)として杉浦直樹の取引先外国人の相手をしたりする。義理の弟がモリッシーみたいな顔をしている。武満徹作曲谷川俊太郎作詞の以下の「だれかと誰か」が幕前に今回の特集の間ずっと流れていたが、この映画のテーマソングだった。

 

曽野綾子原作。桑野みゆきが田舎に帰ろうと思ったところ、ヒョンな事から合唱バーの店主になる。そこでのバイトリーダーが田村正和だが、胃ガンになってしまう。少し理屈っぽさが前面に出てしまっている。キリスト教に救われるのは、曾野綾子の実存の反映か。

 

辻が花(1972)
岩下志麻がフランスに行った大学教授の夫と離婚するが、親戚の佐野守と距離が近づき決定的な接触をするのだが、佐野は岩下の8歳年下なので世間体として結婚するのは難しいという壁にぶち当たる。設定としては32歳と24歳なので離れているがない話でもない。佐野は堅気の仕事をやっているようだし安牌な男に思えるが、相手を詰める幼稚な言動が多いのが気になる。寺でグイグイ詰め寄るのを観ているとまだまだおこちゃまに見えてしまう。佐野守は佐野周二の息子らしい。
 
以上中村登特集の全作品である。この特集タイトルでも「女性賛歌の映画たち」とあるが、意外と女性がそんなに劇場にいない。あくまでも松竹大船調なのでラディカルな態度というよりは人生の諦観も飲み込むような態度なので、わかりやすく進歩的な人物はあまり多くない。自らの出自を引き受けながら生きていく。観客では恐らく私が一番若かった。全体としてしっとりした作品が多いのであまり若者に注目されないのもわかる。憶測だが公開当時も若い人には向けてないような気がする。さっぱりした作風なので地味に映るがちゃんとバランスの良い作品を作り上げるのは、松竹の職人監督の実力か。私のように後追い世代だとアンバランスなカルト的魅力のある作品か、しっかり評価された名作にどうしても目が向く。しかし、今回の特集すべてを観て、まだまだ中村登の作品を観たいと思えているのだから作品の魅力は確かなので、また機会があれば是非特集をして欲しい。

2023年7月鑑賞映画

カードカウンター
シネマート新宿
シネマヴェーラ吉田喜重を観るつもりが、時間がわずかに間に合わず、予定変更。「カジノで初心者がするのに一番適しているはルーレットだ。勝てば2倍に去り、負ければ手持ちがなくなり去れる。」というナレーションがカークから話を持ち掛けられて、行動する合間に挿入されるのが良い。


ハードコアの夜
配信
無情の世界
シネマカリテ新宿
正直言って別監督短編オムニバスって古今東西だいたいつまらないと思っているがこの作品もその認識を変えてくれない。唐田えりか主演の「真夜中のキッス」という作品に出てくる新名基浩の雰囲気が面白い。実際の年齢は40歳らしいが大学生にも見える年齢不詳感が面白い。「イミテーション・ヤクザ」という作品がエンタメ的には一番ウェルメイドな印象を受ける。「あなたと私の二人だけの世界」という作品はアイデアに対して尺が長すぎるように感じてしまった。内田慈が恋愛セミナーの講師役なのが面白い。この作品で内田慈の近作を調べたら、「あの子の夢を水に流して」という熊本豪雨を描いた映画に主演で出られていたとのこと。情報抜けしてしまった。満員だったけれど、どうやって観客を呼んでいるのかが不明だ。私が勝手に考えた計算式だが、一般的長編映画と比較して、スタッフ役者どちらも単純計算で3倍なので関係者の友達も3倍なのである程度の利益を見込めるのかもしれない。

ペトラ・フォン・カントの苦い涙
新宿武蔵野館
「苦い涙」はまだ見ていないが、たまたま飲み会までの時間を逆算したらこの映画が浮かび上がってきたので、苦手なファスビンダーに再挑戦。うーんやっぱりこの演技っぽい時間の流れ方が嫌だなと思っていたら、これ戯曲が元なのか。2つのシーンを1時間ずつで描く。恋愛に見えるものもすべて自らの損得に過ぎないのかもしれないというシニカルさが立っている。ついこないだ観た「Tar」ももしかしたらこの映画を下敷きにしているかもしれない。自殺した監督の映画で主演が「死にたい」と言っているのはキツい。この自殺に対する態度は前にファスビンダーを観た時も気になった。後から見る観客はどうしたってその事実が気になる。

老人Z
目黒シネマ
昔、Amazonでタイトルを発見して気になっていたが、上映を見掛けて鑑賞。介護が今後の日本の問題になるのではという予感を捉えたのが素晴らしい。ただ、このテーマで介護用ロボットが暴れ出したらどうなるか?という楽観的な捌き方をできるだけの余裕が当時あったということか。昨年の「PLAN75」も似た終末期医療についての映画だが、この軽さはなかなか出せない。生まれて間もない人間と人生を80年ほど過ごしてきた人間では、後者には選挙権があるが前者には選挙権がない。これがいつまで経っても高齢者優遇社会を再生産しているが、最後の人口ボリューム層の団塊ジュニアが死ぬまでこの高齢者優遇社会は恐らく続く。そもそも10年後生きているかも分からない人間に選挙権が1票分必要であるかという問いは立てられる。

MEMORIES

目黒シネマ

オムニバスアニメ。どれも楽しい。


0線の女狼群
国立映画アーカイブ
東宝作品。レイプリベンジ映画だけれど、撮り方がいちいち良い。会話を畳でしていると、話のレベルが変わったときに一気に高さを付けた撮り方をするのがカッコいい。高さのアクセントが全体としてとても良く、大学生のケンカシーンでも高さが効果的に使われていた。内容自体はC級だけれど、C級な良さがある。


煉獄エロイカ

シネマヴェーラ

天井スレスレは新宿やくざで見た。ロブグリエ、革命、レズビアン、ショットの独特さはどこからくるのだろう?鏡と角度。斜め、堀で暴行

日本脱出
シネマヴェーラ
ノワール傑作。オリジナル脚本だが、軽さと重さのバランスもとてもよい。溶接の炎がカッコいい。女優もかわいい。

情炎
ビールを飲む時に違う銘柄2本を同じグラスに一気に注いでたのが気になった。石を削っている男が妙に芝居掛かった喋り方たが、それがかえって合っている。母子愛人ジャンル映画だった。荒野で、右から左に進んでいるがトラックにひかれるシーンが面白い。また、会話をリップシンクさせないのも文学的な味がある。女愛人との会話での音声は1倍速だが、カットして違う位置(服を観ながら)なのも面白い。ラスト30分ぐらいからのホテルでのドロドロした会話が妙に心地良い。

トラック野郎度胸一番星
神保町シアター
佐渡を舞台にしたトラック野郎。このシリーズは初めてですが、この映画の系譜にVシネのデコトラシリーズなどもあるのだろう。観光映画としての緩い展開がキツかったが、映画としては面白い演出も多い。愛川欽也をスクリーンで観るのは初めて。片平なぎさの涼しさが気持ちいい。トラック仲間のデブ、ヒゲ、サングラスの人がやけに目を引く。

傷だらけの天使(1997)
神保町シアター
阪本順治の映画は上映されたものは全て見るぞという気持ちなのでこの映画も見た。撮影が笠松則通なので間違いなく良いと思ったが、脚本としてはどう見れば良いのだろう。子供連れているのは、オリジナルファンはどうか。冒頭の車の故障から歩いてるトヨエツを撮る時、カメラがフラフラしているのが不思議な撮り方だ。原田知世が良い。続編があるらしい。トヨエツがモーフィアスみたいな鼻に止めるタイプのサングラスをしている。マトリックスよりこっちの方が早い。

眠る虫
ポレポレ東中野
再上映。金子由里奈作品は「ぬいぐるみと喋る人は優しい」で初めて観ましたが、その映像リズムの面白さで、前作も観てみたいと思い鑑賞。「有りがとさん」や「昇天峠」、「ユリイカ」「ことの次第」のようなバス映画かと思うと、意外な方向に進んでいく。なにより、冒頭のタイトルまでがカッコいい。1軒の家にたどり着く。そこから、死んだはずの他人の老夫婦とその孫とちょっとした交流をする。コメディセンスが秀逸で、じいさんが横たわりティッシュを顔を敷いて死んでるかと思わせておいてティッシュを高く吹き出す。階段から落ちたかと思わせておいて、動き出す。この監督が不条理コメディなどを撮っても面白そう。「ぬいぐるみ~」は生真面目なテーマなのでそういう人かと思っていたが、ユーモアが優れている。犬のライト首輪もなんだか映像的に面白い。バス停で子供が5人ぐらい出てくるが、ここは「ぬいぐるみ~」とも共通している。バスの中でスローシネマ的な固定ショットがあるが、視点を全体に散らすような演出も飽きさせない。高間賢二がクレジットにでていたが本当に撮影はしていないのか。かなり豪華なキャスト。人脈として繋がりのあるのかな。考えてみれば、父の金子修介監督は高間賢二と何回か組んでいるからそこで繋がりがあるのかもしれない。自分で録った環境音を自分の家で聞いているというのは、同世代の「裸足で鳴らしてみせろ」とシンクロしている。音楽もよかったのでリンク付きのシールを購入した。


死の棘
国立映画アーカイブ
小栗康平の映画は二作目だが、「泥の河」より更に地味。夫婦というか子供もいるが松坂慶子岸部一徳の夫婦。岸部一徳が浮気をしており松坂慶子がそのことで病んでしまっている。前に見たずっとイビキをかいて寝ている人が居たが、終演後に「ずっと寝てるなら、こんなとこ来るな」と怒鳴られていた。その人は不貞腐れて黙っていた。


バイオハザードデスアイランド
チネチッタ川崎
バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」が良かったので鑑賞。位置関係やさっきは別の部屋にいたはずの人が急に居たりするのがあまり感心しない。「~ラクーンシティ」の方が豪快な面白さがあったのにと思ってしまう。パチンコ版もあるみたい。

交換ウソ日記
チネチッタ川崎
音楽使いがうまい。前に見た「」キラキラ映画では、遊園地がやっぱ定番なのね。マキシマム ザ ホルモンイースタンユース、miwaなどの使い方が嫌みがなくて心地良い。マキシマム ザ ホルモンって自分が高校生ぐらいの時からもう人気だったけど、今でも映画の中で使われるぐらいフェイマスなのか。「500日のサマー」でスミス仲間で近づくという展開があったが、この作品の方が変な嫌みがないのが良い。

砂糖菓子が壊れるとき
国立映画アーカイブ
今井正若尾文子橋田壽賀子曽野綾子と来ればかなりビッグネームばかりだが、映画仲間に聞くとあんまり評判が良くないからパスとのこと。女優映画として、悲劇なのだが要するに「エルヴィス」みたいな映画ではある。津川雅彦のサングラスがカッコいい。

モーリーズ・ゲーム
配信
ドライな撮り方がかっこいい。

オーシャンズ11
配信
すっきりしたジャンル映画で気持ち良い。

ランナー・ランナー
配信

まぁこんなもんかなな映画。


惜春鳥
国立映画アーカイブ
津川雅彦を2日連続で観る。傑作。映画史的には、日本で初めてのゲイ映画とのことですが、なるほどと頷ける。群像劇ってこんなに魅力的なのかと改めて思う。佐田けいじ津川雅彦

殺人カメラ
シネマヴェーラ
デスノートや藁人形を思い出した。冒頭10分のカメラ屋が出てくるまでアテレコが気になってセリフが頭に入ってこなかった。

子供たちは見ている
シネマヴェーラ
デシーカは名作っぽい佇まいだし、実際に名作なので語られることはあまり多くない印象だけれど、確かに良い。あまりに優等生的な演出なのも映画マニアからの言及率が低いことの要因のような気もするけれど、確かに良い。前述のとおりこの手の不倫映画は最近やけに見ていて楽しいが、この映画はしんどすぎる。

ファーゴ
目黒シネマ
いずれもBD上映だがありがたい。近過去の名作を上映してくれる機会は意外と少ない。コーエン兄弟のユーモアはたっぷりだが、どこか理論的支柱があるので対象に溺れないシニカルさが気持ち良いような気がする。面構えがどこ取っても良い。フランシス・マクドーマンド、ハーヴ・プレスネル(義理父)、ウィリアム・H・メーシーそれは観る前から知っていたが、デリヘル嬢役の(IMDB情報で読んだが)Melissa Peterman、Larissa Kokernotの顔も素晴らしい。参考画像以下
Who is Larissa Kokernot dating? Larissa Kokernot boyfriend, husband
どれも良いがフランシス・マクドーマンドの夫の画家のJohn Carroll Lynchも良い。あまり知名度はなくてもちゃんと実力者というか、この顔すごいだろと製作者が自信を持っているのが良い。

ノー・カントリー
目黒シネマ
この映画も役者の面が良い。トミリーやバルデㇺ、ジョシュ・ブローリン、ウッディなどの主演が良いのは当然だけれど、Kathy Lamkinというトレイラー事務所の方も素晴らしい。
Kathy Lamkin - Texas Chainsaw Massacre Actress Has Passed Away


シリアスマン
配信
ユダヤ人コミュニティを自伝っぽく描く。スピルバーグの「フェイブルマンズ」も自らがユダヤ人であることを描いていたが、こっちの方がそこが濃厚だった。


ビッグ・リボウスキ
目黒シネマ
昔DVDで観た時もはまらなかったが、今回もあまりはまらなかった。目指したところとしては、更に崩れてよれてる「ロング・グッドバイ」なのかもしれない。ジョン・グッドマンの体型とサングラスが面白い。主演のジェフ・ブリッジスを楽しめないのがなんだかはまり切れない要因かな。

バートンフィンク

目黒シネマ

俳優がどこ取ってもやはりいい。


ルール・オブ・デス カジノの死角
輸入DVD
リージョン2。pal方式。原題はCROUPIER。「カードカウンター」で賭博映画を掘りたい気分になり、観てますがロンドンが舞台だからか普通に1日の営業が終わる。アメリカではカジノは24時間営業するので比較したくなる。このクルーピエがかっこいいが、ちょっと古臭い展開も気になる。

カジノ
配信
ギャンブル映画をまとめで鑑賞。後半の夫婦の不和を描くのがなんだか退屈に見えてしまう。照明を一箇所に当てるのが特徴的。愛されない悲しい男としてのデニーロがなんだか悲しい。映像流しながら交互にナレーションするのは、まとめ臭くて映画原理主義的には嫌われるけれど、シャープな印象にはなる。

ラウンダーズ
配信


君たちはどう生きるか
TOHOシネマズ川崎
自伝的な映画かなと思いきや、なぜかラスト20分で世俗的なまとめかたで軽くなるのがとても気持ちいい。うるさがたはそこに厳しく言うのもわかるが、軽くいなすような態度が気持ち良い。アオサギが大叔父さんなのかと思ってましたが、どうやら違うらしい。母親姉妹についての考え方がどこで変わるのかも曖昧。それも都合よく考えれば、なんとなくで解決してしまうことは人生に確かにある。

ミッション・イン・ポッシブル デッドレコニングPART1
川崎109シネマ
このシリーズは好きなはずなのに、妙に退屈に感じてまった。字幕で「それ」を乱発するので、どうでもよく思ってしまいました。時間がとにかくダルくて時計を気にしながらの鑑賞でした。新作を最近後回しにしているが、久しぶりに見たのがこんな作品だと新作から遠ざかりかねない。

薔薇の葬列
目黒シネマ
目薬、淀ちょう、親子


修羅
目黒シネマ
何度も同じシーンを繰り返す。照明のこだわりかた、スローモーション、対面切り返しを横移動のカメラの動きでみせる。ベスト級に良いかも。美人局にぶちギレる侍というみっともなさもなんだか可愛い。

 

智恵子抄(1967)
神保町シアター
中村登特集ここ3年ぐらいまとめて観たいと思っていたが、やっとやってくれた。全部観たい。岩下志麻の妻が芸術や親の死などて精神病に掛かってしまう。岩下志麻が精神病に掛かるのは珍しくないが、ちょうどこの前に観た「死の棘」よりしっかりドラマっぽい。色使いのゆたか

春を待つ人々
神保町シアター
中村登の映画は芸術家が多い。佐田啓二の関西弁が心地よい。撮影が小津安二郎の印象の強い厚田雄春伊藤雄之助が画家仲間として出てくるのが面白い。愛人妾問題が浮き上がってくるが、そこをキレイに往なしていくストーリーがキレイだが、キレイすぎやしないか。

鏡の中の裸像
神保町シアター
和子を演じる桑野みゆきがだいぶ可愛い。美容師の女性3人の人生の分岐を見つめる。チンピラ役の田中邦衛のボーダーのシャツがとにかくカッコいい。下宿先の青年から見ると都合の良い手のひら返しに苛立つが、人間の本性なんて本当にトラブルが起きないと分からないというのも世の真理。川津祐介演じるヒモ男もしょうもない。神山繁のハゲた臑齧りの息子も憎くて良い。ハゲてる癖に自活できてないっていうのが笑えてくる。また、山本圭が足の悪く少し世を斜に見ると青年をここでも演じている。

爽春
神保町シアター
岩下志麻が嫁に行かず、父親と二人暮らしだが、実をいうとロンドン駐在に際して別れた元彼と不倫関係にある。友達の女子大生のバイト先工面をしてあげる。その女子高生とは家族ぐるみの付き合いがある。ラストの方では父親同士が喧嘩をしてしまうが、そこでたまたま、家庭的スワッピングをして仲直りをする。森光子が良い。あんな不倫関係を解消させるには、娘にそれなりに遊ぶような環境になってもらうしかなく、それを考えるとバーで仕事をするのはソリューションとしてありに思えてくる。帰りにトイレでおじさんが、「長崎旅行にサラリーマンがつきまとうところで(ストーリーが)崩壊した」と言っていましたが、彼はアフリカ出張から帰ってきて長期休暇を取るように会社から言われていたので、一応は筋が通っているが、そう思ったのなら一観客の評価とさせていただきます。更に「そんなんだから他の劇場で掛かってるのを観たことない」との評価でした。

スサーナ
シネマヴェーラ
ルイス・ブニュエルも同じく8月の要チェック特集。あの女は悪魔である。あの女が去れば万事解決である、という映画のストーリー幼稚過ぎる気もするが、ホームインヴェイジョン映画として面白い。尺も85分と短いのも良い。終盤のムチで母親がスサーナをひっぱたく時の顔が素晴らしい。

南海の白影

あまり楽しめなかった。実際にポリネシアでロケをしたというのが、映画史的には注目点らしい。しかし、セリフに寄り過ぎているように感じてしまった。音楽が鳴りっぱなしなのはサイレントでよくあるがなんだか眠くなる。

 

グラン・カジノ
油田の町のカジノを舞台にした失踪を追う作品だが、歌が良い。最後に急に石油会社が黒幕だったとわかる。娯楽作として気持良い。


黄金時代

主人公がwilem defoeに似ているのがずっと気になってしまった。宗教に対しての批評性みたいなところがあまり良く理解できなかったがアッパーなノリはなんだか楽しい。

 

海外

新作2本
旧作11本

配信ソフト9本

計22本

 

日本
新作3本

旧作19本

計21本
合計43本

2023年7月鑑賞映画

カードカウンター
シネマート新宿
シネマヴェーラ吉田喜重を観るつもりが、時間がわずかに間に合わず、予定変更。「カジノで初心者がするのに一番適しているはルーレットだ。勝てば2倍に去り、負ければ手持ちがなくなり去れる。」というナレーションがカークから話を持ち掛けられて、行動する合間に挿入されるのが良い。


ハードコアの夜
配信
無情の世界
シネマカリテ新宿
正直言って別監督短編オムニバスって古今東西だいたいつまらないと思っているがこの作品もその認識を変えてくれない。唐田えりか主演の「真夜中のキッス」という作品に出てくる新名基浩の雰囲気が面白い。実際の年齢は40歳らしいが大学生にも見える年齢不詳感が面白い。「イミテーション・ヤクザ」という作品がエンタメ的には一番ウェルメイドな印象を受ける。「あなたと私の二人だけの世界」という作品はアイデアに対して尺が長すぎるように感じてしまった。内田慈が恋愛セミナーの講師役なのが面白い。この作品で内田慈の近作を調べたら、「あの子の夢を水に流して」という熊本豪雨を描いた映画に主演で出られていたとのこと。情報抜けしてしまった。満員だったけれど、どうやって観客を呼んでいるのかが不明だ。私が勝手に考えた計算式だが、一般的長編映画と比較して、スタッフ役者どちらも単純計算で3倍なので関係者の友達も3倍なのである程度の利益を見込めるのかもしれない。

ペトラ・フォン・カントの苦い涙
新宿武蔵野館
「苦い涙」はまだ見ていないが、たまたま飲み会までの時間を逆算したらこの映画が浮かび上がってきたので、苦手なファスビンダーに再挑戦。うーんやっぱりこの演技っぽい時間の流れ方が嫌だなと思っていたら、これ戯曲が元なのか。2つのシーンを1時間ずつで描く。恋愛に見えるものもすべて自らの損得に過ぎないのかもしれないというシニカルさが立っている。ついこないだ観た「Tar」ももしかしたらこの映画を下敷きにしているかもしれない。自殺した監督の映画で主演が「死にたい」と言っているのはキツい。この自殺に対する態度は前にファスビンダーを観た時も気になった。後から見る観客はどうしたってその事実が気になる。

老人Z
目黒シネマ
昔、Amazonでタイトルを発見して気になっていたが、上映を見掛けて鑑賞。介護が今後の日本の問題になるのではという予感を捉えたのが素晴らしい。ただ、このテーマで介護用ロボットが暴れ出したらどうなるか?という楽観的な捌き方をできるだけの余裕が当時あったということか。昨年の「PLAN75」も似た終末期医療についての映画だが、この軽さはなかなか出せない。生まれて間もない人間と人生を80年ほど過ごしてきた人間では、後者には選挙権があるが前者には選挙権がない。これがいつまで経っても高齢者優遇社会を再生産しているが、最後の人口ボリューム層の団塊ジュニアが死ぬまでこの高齢者優遇社会は恐らく続く。そもそも10年後生きているかも分からない人間に選挙権が1票分必要であるかという問いは立てられる。

MEMORIES

目黒シネマ

オムニバスアニメ。どれも楽しい。


0線の女狼群
国立映画アーカイブ
東宝作品。レイプリベンジ映画だけれど、撮り方がいちいち良い。会話を畳でしていると、話のレベルが変わったときに一気に高さを付けた撮り方をするのがカッコいい。高さのアクセントが全体としてとても良く、大学生のケンカシーンでも高さが効果的に使われていた。内容自体はC級だけれど、C級な良さがある。


煉獄エロイカ

シネマヴェーラ

天井スレスレは新宿やくざで見た。ロブグリエ、革命、レズビアン、ショットの独特さはどこからくるのだろう?鏡と角度。斜め、堀で暴行

日本脱出
シネマヴェーラ
ノワール傑作。オリジナル脚本だが、軽さと重さのバランスもとてもよい。溶接の炎がカッコいい。女優もかわいい。

情炎
ビールを飲む時に違う銘柄2本を同じグラスに一気に注いでたのが気になった。石を削っている男が妙に芝居掛かった喋り方たが、それがかえって合っている。母子愛人ジャンル映画だった。荒野で、右から左に進んでいるがトラックにひかれるシーンが面白い。また、会話をリップシンクさせないのも文学的な味がある。女愛人との会話での音声は1倍速だが、カットして違う位置(服を観ながら)なのも面白い。ラスト30分ぐらいからのホテルでのドロドロした会話が妙に心地良い。

トラック野郎度胸一番星
神保町シアター
佐渡を舞台にしたトラック野郎。このシリーズは初めてですが、この映画の系譜にVシネのデコトラシリーズなどもあるのだろう。観光映画としての緩い展開がキツかったが、映画としては面白い演出も多い。愛川欽也をスクリーンで観るのは初めて。片平なぎさの涼しさが気持ちいい。トラック仲間のデブ、ヒゲ、サングラスの人がやけに目を引く。

傷だらけの天使(1997)
神保町シアター
阪本順治の映画は上映されたものは全て見るぞという気持ちなのでこの映画も見た。撮影が笠松則通なので間違いなく良いと思ったが、脚本としてはどう見れば良いのだろう。子供連れているのは、オリジナルファンはどうか。冒頭の車の故障から歩いてるトヨエツを撮る時、カメラがフラフラしているのが不思議な撮り方だ。原田知世が良い。続編があるらしい。トヨエツがモーフィアスみたいな鼻に止めるタイプのサングラスをしている。マトリックスよりこっちの方が早い。

眠る虫
ポレポレ東中野
再上映。金子由里奈作品は「ぬいぐるみと喋る人は優しい」で初めて観ましたが、その映像リズムの面白さで、前作も観てみたいと思い鑑賞。「有りがとさん」や「昇天峠」、「ユリイカ」「ことの次第」のようなバス映画かと思うと、意外な方向に進んでいく。なにより、冒頭のタイトルまでがカッコいい。1軒の家にたどり着く。そこから、死んだはずの他人の老夫婦とその孫とちょっとした交流をする。コメディセンスが秀逸で、じいさんが横たわりティッシュを顔を敷いて死んでるかと思わせておいてティッシュを高く吹き出す。階段から落ちたかと思わせておいて、動き出す。この監督が不条理コメディなどを撮っても面白そう。「ぬいぐるみ~」は生真面目なテーマなのでそういう人かと思っていたが、ユーモアが優れている。犬のライト首輪もなんだか映像的に面白い。バス停で子供が5人ぐらい出てくるが、ここは「ぬいぐるみ~」とも共通している。バスの中でスローシネマ的な固定ショットがあるが、視点を全体に散らすような演出も飽きさせない。高間賢二がクレジットにでていたが本当に撮影はしていないのか。かなり豪華なキャスト。人脈として繋がりのあるのかな。考えてみれば、父の金子修介監督は高間賢二と何回か組んでいるからそこで繋がりがあるのかもしれない。自分で録った環境音を自分の家で聞いているというのは、同世代の「裸足で鳴らしてみせろ」とシンクロしている。音楽もよかったのでリンク付きのシールを購入した。


死の棘
国立映画アーカイブ
小栗康平の映画は二作目だが、「泥の河」より更に地味。夫婦というか子供もいるが松坂慶子岸部一徳の夫婦。岸部一徳が浮気をしており松坂慶子がそのことで病んでしまっている。前に見たずっとイビキをかいて寝ている人が居たが、終演後に「ずっと寝てるなら、こんなとこ来るな」と怒鳴られていた。その人は不貞腐れて黙っていた。


バイオハザードデスアイランド
チネチッタ川崎
バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」が良かったので鑑賞。位置関係やさっきは別の部屋にいたはずの人が急に居たりするのがあまり感心しない。「~ラクーンシティ」の方が豪快な面白さがあったのにと思ってしまう。パチンコ版もあるみたい。

交換ウソ日記
チネチッタ川崎
音楽使いがうまい。前に見た「」キラキラ映画では、遊園地がやっぱ定番なのね。マキシマム ザ ホルモンイースタンユース、miwaなどの使い方が嫌みがなくて心地良い。マキシマム ザ ホルモンって自分が高校生ぐらいの時からもう人気だったけど、今でも映画の中で使われるぐらいフェイマスなのか。「500日のサマー」でスミス仲間で近づくという展開があったが、この作品の方が変な嫌みがないのが良い。

砂糖菓子が壊れるとき
国立映画アーカイブ
今井正若尾文子橋田壽賀子曽野綾子と来ればかなりビッグネームばかりだが、映画仲間に聞くとあんまり評判が良くないからパスとのこと。女優映画として、悲劇なのだが要するに「エルヴィス」みたいな映画ではある。津川雅彦のサングラスがカッコいい。

モーリーズ・ゲーム
配信
ドライな撮り方がかっこいい。

オーシャンズ11
配信
すっきりしたジャンル映画で気持ち良い。

ランナー・ランナー
配信

まぁこんなもんかなな映画。


惜春鳥
国立映画アーカイブ
津川雅彦を2日連続で観る。傑作。映画史的には、日本で初めてのゲイ映画とのことですが、なるほどと頷ける。群像劇ってこんなに魅力的なのかと改めて思う。佐田けいじ津川雅彦

殺人カメラ
シネマヴェーラ
デスノートや藁人形を思い出した。冒頭10分のカメラ屋が出てくるまでアテレコが気になってセリフが頭に入ってこなかった。

子供たちは見ている
シネマヴェーラ
デシーカは名作っぽい佇まいだし、実際に名作なので語られることはあまり多くない印象だけれど、確かに良い。あまりに優等生的な演出なのも映画マニアからの言及率が低いことの要因のような気もするけれど、確かに良い。前述のとおりこの手の不倫映画は最近やけに見ていて楽しいが、この映画はしんどすぎる。

ファーゴ
目黒シネマ
いずれもBD上映だがありがたい。近過去の名作を上映してくれる機会は意外と少ない。コーエン兄弟のユーモアはたっぷりだが、どこか理論的支柱があるので対象に溺れないシニカルさが気持ち良いような気がする。面構えがどこ取っても良い。フランシス・マクドーマンド、ハーヴ・プレスネル(義理父)、ウィリアム・H・メーシーそれは観る前から知っていたが、デリヘル嬢役の(IMDB情報で読んだが)Melissa Peterman、Larissa Kokernotの顔も素晴らしい。参考画像以下
Who is Larissa Kokernot dating? Larissa Kokernot boyfriend, husband
どれも良いがフランシス・マクドーマンドの夫の画家のJohn Carroll Lynchも良い。あまり知名度はなくてもちゃんと実力者というか、この顔すごいだろと製作者が自信を持っているのが良い。

ノー・カントリー
目黒シネマ
この映画も役者の面が良い。トミリーやバルデㇺ、ジョシュ・ブローリン、ウッディなどの主演が良いのは当然だけれど、Kathy Lamkinというトレイラー事務所の方も素晴らしい。
Kathy Lamkin - Texas Chainsaw Massacre Actress Has Passed Away


シリアスマン
配信
ユダヤ人コミュニティを自伝っぽく描く。スピルバーグの「フェイブルマンズ」も自らがユダヤ人であることを描いていたが、こっちの方がそこが濃厚だった。


ビッグ・リボウスキ
目黒シネマ
昔DVDで観た時もはまらなかったが、今回もあまりはまらなかった。目指したところとしては、更に崩れてよれてる「ロング・グッドバイ」なのかもしれない。ジョン・グッドマンの体型とサングラスが面白い。主演のジェフ・ブリッジスを楽しめないのがなんだかはまり切れない要因かな。

バートンフィンク

目黒シネマ

俳優がどこ取ってもやはりいい。


ルール・オブ・デス カジノの死角
輸入DVD
リージョン2。pal方式。原題はCROUPIER。「カードカウンター」で賭博映画を掘りたい気分になり、観てますがロンドンが舞台だからか普通に1日の営業が終わる。アメリカではカジノは24時間営業するので比較したくなる。このクルーピエがかっこいいが、ちょっと古臭い展開も気になる。

カジノ
配信
ギャンブル映画をまとめで鑑賞。後半の夫婦の不和を描くのがなんだか退屈に見えてしまう。照明を一箇所に当てるのが特徴的。愛されない悲しい男としてのデニーロがなんだか悲しい。映像流しながら交互にナレーションするのは、まとめ臭くて映画原理主義的には嫌われるけれど、シャープな印象にはなる。

ラウンダーズ
配信


君たちはどう生きるか
TOHOシネマズ川崎
自伝的な映画かなと思いきや、なぜかラスト20分で世俗的なまとめかたで軽くなるのがとても気持ちいい。うるさがたはそこに厳しく言うのもわかるが、軽くいなすような態度が気持ち良い。アオサギが大叔父さんなのかと思ってましたが、どうやら違うらしい。母親姉妹についての考え方がどこで変わるのかも曖昧。それも都合よく考えれば、なんとなくで解決してしまうことは人生に確かにある。

ミッション・イン・ポッシブル デッドレコニングPART1
川崎109シネマ
このシリーズは好きなはずなのに、妙に退屈に感じてまった。字幕で「それ」を乱発するので、どうでもよく思ってしまいました。時間がとにかくダルくて時計を気にしながらの鑑賞でした。新作を最近後回しにしているが、久しぶりに見たのがこんな作品だと新作から遠ざかりかねない。

薔薇の葬列
目黒シネマ
目薬、淀ちょう、親子


修羅
目黒シネマ
何度も同じシーンを繰り返す。照明のこだわりかた、スローモーション、対面切り返しを横移動のカメラの動きでみせる。ベスト級に良いかも。美人局にぶちギレる侍というみっともなさもなんだか可愛い。

 

智恵子抄(1967)
神保町シアター
中村登特集ここ3年ぐらいまとめて観たいと思っていたが、やっとやってくれた。全部観たい。岩下志麻の妻が芸術や親の死などて精神病に掛かってしまう。岩下志麻が精神病に掛かるのは珍しくないが、ちょうどこの前に観た「死の棘」よりしっかりドラマっぽい。色使いのゆたか

春を待つ人々
神保町シアター
中村登の映画は芸術家が多い。佐田啓二の関西弁が心地よい。撮影が小津安二郎の印象の強い厚田雄春伊藤雄之助が画家仲間として出てくるのが面白い。愛人妾問題が浮き上がってくるが、そこをキレイに往なしていくストーリーがキレイだが、キレイすぎやしないか。

鏡の中の裸像
神保町シアター
和子を演じる桑野みゆきがだいぶ可愛い。美容師の女性3人の人生の分岐を見つめる。チンピラ役の田中邦衛のボーダーのシャツがとにかくカッコいい。下宿先の青年から見ると都合の良い手のひら返しに苛立つが、人間の本性なんて本当にトラブルが起きないと分からないというのも世の真理。川津祐介演じるヒモ男もしょうもない。神山繁のハゲた臑齧りの息子も憎くて良い。ハゲてる癖に自活できてないっていうのが笑えてくる。また、山本圭が足の悪く少し世を斜に見ると青年をここでも演じている。

爽春
神保町シアター
岩下志麻が嫁に行かず、父親と二人暮らしだが、実をいうとロンドン駐在に際して別れた元彼と不倫関係にある。友達の女子大生のバイト先工面をしてあげる。その女子高生とは家族ぐるみの付き合いがある。ラストの方では父親同士が喧嘩をしてしまうが、そこでたまたま、家庭的スワッピングをして仲直りをする。森光子が良い。あんな不倫関係を解消させるには、娘にそれなりに遊ぶような環境になってもらうしかなく、それを考えるとバーで仕事をするのはソリューションとしてありに思えてくる。帰りにトイレでおじさんが、「長崎旅行にサラリーマンがつきまとうところで(ストーリーが)崩壊した」と言っていましたが、彼はアフリカ出張から帰ってきて長期休暇を取るように会社から言われていたので、一応は筋が通っているが、そう思ったのなら一観客の評価とさせていただきます。更に「そんなんだから他の劇場で掛かってるのを観たことない」との評価でした。

スサーナ
シネマヴェーラ
ルイス・ブニュエルも同じく8月の要チェック特集。あの女は悪魔である。あの女が去れば万事解決である、という映画のストーリー幼稚過ぎる気もするが、ホームインヴェイジョン映画として面白い。尺も85分と短いのも良い。終盤のムチで母親がスサーナをひっぱたく時の顔が素晴らしい。

南海の白影

あまり楽しめなかった。実際にポリネシアでロケをしたというのが、映画史的には注目点らしい。しかし、セリフに寄り過ぎているように感じてしまった。音楽が鳴りっぱなしなのはサイレントでよくあるがなんだか眠くなる。

 

グラン・カジノ
油田の町のカジノを舞台にした失踪を追う作品だが、歌が良い。最後に急に石油会社が黒幕だったとわかる。娯楽作として気持良い。


黄金時代

主人公がwilem defoeに似ているのがずっと気になってしまった。宗教に対しての批評性みたいなところがあまり良く理解できなかったがアッパーなノリはなんだか楽しい。

 

海外

新作2本
旧作11本

配信ソフト9本

計22本

 

日本
新作3本

旧作19本

計21本
合計43本

2023年6月鑑賞映画

怪物

109シネマズ川崎

前作のいかにも巨匠な自らのシマで取ったような退屈さはないけれど、かといって圧倒されるほどでもない映画。君は良い子のような圧倒的な演技と全く思わない。
タルコフスキーのストーカーが好きなのはよくわかった。先週観たtarでもオマージュしていた。いじめられっ子と裏でつるんで、助けないような子供は大人になってもそんな人になるんだろうな。子供の同性愛とかより、そこが気になってしまう。助けてくれない男を彼氏にしてもしょうがないと思うがどうだろう。
後半40分ぐらいの答え合わせがつまらない。息子のクィア性に気付かない安藤サクラより、はっきりとその事を知り、動揺して恐らく虐待をしている中村獅童の視点の方を導入したほうが、子供の性をどう観ればいいのかという、更に踏み込んだ論点に進めるのにしないで、聖なるLGBTとしてふんわりと置きっぱなしにする。この映画の男子同士のキャッキャに同性愛を感じられなかった。これぐらい誰でもありそうなのに。だからこそ、予告でLGBTを描いた映画というのは伏せて置いたのかな。

好き嫌いは置いといて、tarやエゴイストは同性愛者の権力性や商品としての性に踏み込んで、聖なるLGBT像を打ち壊そうとしているが、この映画では子供というのを足して、聖なる子供・LGBTにしてしまっている。天国としてのラストにも二人とも天国に行けるような人間だったかと疑問が残る。安藤サクラの息子は地獄に落ちるべきである。最初の段落に戻るが、自分はいじめっ子グループとつるんで、自分が可愛くて表向きには助けてくれない男を彼氏にしてもしょうがない。田中裕子に語らせる嘘も方便なんだという話の凡庸さもよく分からない。そんな言葉私でも言えそうだ。そんな一般化した言葉聞かせても何が面白いんだ。

 

 

雄獅少年 ライオン少年

109シネマズ川崎

スポ根ものの憧れの人物が、自らの経済状況を想像してもらえないという苦い経験を描くなんて、観たことない。挫折としても、親が倒れて仕事にでなければならなくなりつづけられないなんてきつすぎる。人生は苦しいが屈するなというメッセージのゴツさに感動する。戒めのための高い塔に登ろうとする愚行を、自滅してでも瞬間の輝きに魅せられてしまうことがあったっていい。獅子舞で人生を変えられることもないし、成功したって人生は苦しい、それでも輝きたいという情熱が素晴らしい。

 

 

殺し屋ネルスン

シネマヴェーラ渋谷

ドン・シーゲルの作品はstrangerで満員で観れなかったが、ヴェーラで特集をしてくれてうれしい。本作は蓮實重彦がさんざん自著などで擦ってきた持ちネタなので、やっと観れた。これが、かなり語り口が早い。私の去年のベストに挙げた「それがいる森」にも通じる簡潔で迫力がある語り口で楽しい。

 

復讐!反ナチ地下組織

シネマヴェーラ渋谷

ジーン・ネグレスコ監督。スパイ映画としてとても楽しい。フライングダッチマンの異名を持つナチスレジスタンスのスパイ劇。

 

北部への追撃

シネマヴェーラ渋谷

ラオール・ウォルシュ監督。この作品がとても楽しい。誰が観たって面白いような映画。語り口が簡潔で演出も実直なのが良い。

 

 

贅沢は素敵だ

シネマヴェーラ渋谷

資本主義プロパガンダ映画。二ノチカも引き合いに出されるのが理解できる。

 

 

ママボーイ

飛行機

英語字幕で鑑賞。原題:初戀慢半拍/MAMA BOY。飛行機のなかで映画が観れたので観てみた。調べてみると2023年7月に日本で公開されるらしい。童貞で子供部屋おじさんで母親の支配下に置かれているけれど、ナイスな男が恋愛をするために、いろいろ経験してみるが、風俗店での受付のオーナーの一回り以上年上の女性に恋をする。ラブコメとしてとても丁寧で心地よい。日本で公開されたら改めて観たい。

 

スリングショット

飛行機

台湾・香港合作。原題:叱咤風雲 Ne Zha。前に「アライブ・フーン」でドリフトへの愛に圧倒されたが、この作品では、レーシングを扱う。86が出てくる辺りから頭文字Dって影響力でかいな。

 

ことの次第

新宿武蔵野館

武蔵野館には、毎日来ている常連がいるような気がする。いつもとある2022年のストップモーションアニメ映画のTシャツを着ているような。大学生になって映画に興味をもった時にTSUTAYAで借りて観た記憶があった。当時はかっこいい映画と思っていたが、最近ヴィム・ヴェンダースを何作か観て正直言ってあまり重要ではなく、つまらないという意味での静的な作品が多くて、なんだか頭でっかちなのも鬱陶しく感じているが、今観るとどうか。ラスト近くのキャンピングカーは青山真治の「ユリイカ」が影響を受けているのかな。主人公の口から「映画はストーリーで見てはいけない」とはっきり口に出すのも、ダサく見えてしまう。「捜索者」、観たことありません。

 

細い目

目黒シネマ

初見の監督。金城武ウォン・カーウァイ、ディカプリオ、ジョン・ウーなどの固有名詞の使い方が面白い。更に植民地についての取り扱いも面白い。ラスト近くの妊娠させちゃったけど、良い男とされている男が原付で事故って死ぬのはどう見れば良いんだろう。男に都合が良すぎて気になる。それ以外はとても品が良いのに。ヒロイン役のお父さんがスキンヘッド、髭、デブという分かりやすく面白い見た目で、そのおっさんがブリーフ一丁になるのが、面白い。

 

Sepet": The cast 10 years later | News & Features | Cinema Online

 

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

目黒シネマ

年齢、セクハラ、俺はあの人の知り合いだという不愉快な話を映画館スタッフにする老人がいた。公開当時から評価のされかたがすごくて、進学校と聞いていたのでなんとなく観ないでいいやという気分になってしまった。こっちは偏差値50切るような高校を出たのでそれどころじゃないんだと思ってしまっていた。文化問題より経済問題の方が切迫してる人間にとって全部どうでもよく見えてしまう。ジジとジャレッドの虚しさの方が印象に残る。

 

スーパーバッド 童貞ウォーズ

目黒シネマ

昔、DVDで観て大好きな映画だったけれど、10年ぐらい経ったからか随分見え方が変わってしまった。当時は、偉そうにしているウザいジョナ・ヒルに注目していたが、今ではマクラヴィンに注目してしまう。この警察の横暴っぷりを楽しめていたのも懐かしい。ジョナ・ヒルがアルコールで女性を潰そうと言うが今見ると可愛く思えない。

 

カード・カウンター

ヒューマントラスト渋谷

ポール・シュレイダーって年齢的にも評論もしていることを考えると日本で言うと荒井晴彦みたいな存在なのかな。前作の「魂のゆくえ」でも陰気で日記をつける男が決断して勝ちこむ展開。山上の安倍銃撃事件をテーマにした「REVOLUTION+1」をポール・シュレイダーが撮ったらとてもハマってしまいそうと不謹慎なことも考えてしまう。カードカウンターって本当にあるカジノの手法と聞いたことがある。賭博映画って定期的に作って欲しい。もう一度見たいぐらい気に入ってしまった。満員だったので、拡大公開されそうな気がする。

 

ザ・フラッシュ

Tジョイプリンス品川

この人がエズラ・ミラーか。配合で言うなら、堺雅人トータス松本を足して2で割って、バリー・コーガンでまとめたような不思議な顔だ。日本人にもそのまま居そうな顔でもある。おこがましいが、私が20キロぐらい痩せたら似てるような気もする。ゴシップでたまに名前を聞いていたが映画で中心的な配役で観るのは初めて。人生の別れに対しての大人な態度が心地良い。アメコミ好きのネタは良くわからなかったけれど、そこもそんなに気にならない。この後書く他の映画とのシンクロニシティについては別途記事にした。

 

探偵マーロウ

TOHOシネマズシャンテ日比谷

リーアム・ニーソンラソンをしているような気分だが、今回ではこの「探偵マーロウ」と「ブラックライト」が良かった。映画小ネタなどがうれしいし、最近見た「ロング・グッドバイ」のトーンともちゃんと共振している。少しストーリーが分からなくなるけれど、そこも敢えてなのかな。

 

スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース

吹替と字幕dolbuatomosで2回鑑賞。絵柄がバラバラなのが刺激的で疲れる。私もこの映画のミゲルみたいに、誰もの人生が同じようなものなのかもしれないと思ってきているので、主人公の決断はあまりピンと来ない。程度の差こそあれど、親と子では親が先に死ぬのが一番穏当な死に方と言っていい。親と子で子が先に死ぬのならとてもつらい。親が先に死ぬのが世界のカノンイベントに思えてしまう。

 

忌怪島 きかいじま

シネマサンシャイン平和島

金曜の21時からの上映で完全に貸し切り状態。人生3度目。1回目は3連休中土曜日19時からのkino cinema横浜「よだかの片想い」2回目は日曜20時キネカ大森「すずめの戸締まり」。和田光沙と祷キララというどちらも素晴らしい役者が狂女的な役回りをしている。どちらも素晴らしい。実直な作りだと思うけれどもう少しユーモアを入れて欲しい。カメラで撮っているシーンかと思いきやカーブミラー越しというトリックショットが面白い。

 

劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE

TOHOシネマズ川崎

映画館では珍しく若い人が多い。男女比も半々ぐらいで皆なんとなくシャープな印象の方が多かった。入管法や植民地についての言及など政治意識がしっかりあるのも良い。テロ描写があったのも驚いて、記事を書いた。



ボブ・クレイン 快楽を知ったTVスター
Amazonプライム
ポール・シュレイダーの「カード・カウンター」があまりに良いので、この人のキャリアをちゃんと追ってみようと思い鑑賞。本作ではマイケル・ガーボシというこの作品以外あまり表立ったキャリアが

ない方が、脚本を担当している。とはいえ、かなりポール・シュレイダーの色は濃く、ところどころ主人公のナレーションがしたり、宗教に救いを求めたり、ラストの殺されてから朝をワンカットで迎える照明などは「カード・カウンター」や「魂のゆくえ」ともつながる。ストーリーとしては、取り巻きがソニーで営業をしているため、ビデオカメラを手に入れてハメ撮りをしまくる。ヤリまくるのは、欲望として珍しくないが、ビデオカメラで自らを撮りたいというのは、どういうことだろう。「ビデオドローㇺ」や「VIDEOPHOBIA」などでも少し触れているテーマだ。エルヴィスの名前も出てくるが、あの映画と同じくフェイマスになると友人がいなくなる感覚が寂しい。まだまだ、観たい。

スーパーマリオブラザーズ
TOHOシネマズ渋谷
渋谷TOHOは初めて。吹き替えでも観たくて、鑑賞。

ワイルドスピードシリーズ1~9
配信

 

海外

新作7本
旧作8本

配信11本

計26本

 

日本
新作3本

計3本
合計29本

劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCEを観たらテロを描いていて驚いた

 まず、私の年齢をはっきりさせた方がいいと思うので書きますが私は今年29歳でPSYCHO-PASSは勘で書くけれど、私が高校生か大学生の時にテレビアニメの放送していたかと思う。テレビアニメに対するアンテナは当時も低かったと思うが、アクション映画で引っ掛かって認知はしていた。けれど、犯罪予知というのが、マイノリティ・リポートみたいだと思ったぐらいだった。そのままなんとなく観ることなく年を重ねて今に至る。

 そもそも普段のアニメとの接し方としては、映画は観るけれど、テレビアニメは観ておらず、アニメ映画は観るけれど、普段はテレビアニメからの連続としての劇場版は観ていない。けれど、スパイダーマンアクロス・ザ・スパイダーバースを鑑賞して日本のアニメも観たくなり、PSYCHO-PASSの劇場版をシネコンで上映していることに気付いて鑑賞。

 ストーリーとしては、主人公の公安省の常守朱花澤香菜)が閣議のシビュラシステム(という犯罪係数を図り、犯罪を未然に防ぐシステム)が発達したため、法律(正しくは刑法?)は不要とする議論に参加する。出席予定だった経済学者は外務省管轄組織のピースブレイカーが暴走して、殺害する。ピースブレイカーの調査に乗り出すが、組織の陰謀に巻き込まれる。
 私としては昔は海外拠点が暴走するという「地獄の黙示録」みたいなことって管理としてありうるのかと思っていたが、会社員をしていると似たようなことを見掛けることが確かにある。

 常守としては、シビュラシステムのみでの運用は危険なため、法律は必要であるという立場だが、閣議では押し込まれてしまい、映画後半ではすべての法律を廃案とする審議が進んで行く。本作のピースブレイカー壊滅で評価された常守は、公安省から厚生省へ鞍替えを促される。就任式で常守は 公安局局長を撃ち殺すが、常守はシビュラシステムとしては規定数値内のため、シビュラシステムも不完全であることをパフォーマティブに提示する。映画としては常守は収監されて終わる。

 この映画自体のなかで常守の銃撃シーンはあっさり描かれる。それだけに、この映画のなかで明確に常守の主観には迫らないが、迫るとあまりに明確にテロを肯定してしまう為、避けたのかと裏読みしてしまう。

 この映画自体がテレビアニメの間を描いているので、このテロシーンもPSYCHO-PASSを通して観ている人からすれば、後で覆されたり相対化されたりするのかもしれませんが、「間違っているけれど、これしかない」というタイプのテロではなく、統治としての問題点を見せつけるために実演したテロとしてかなり特異に見える。

 この作品に限らず最近の日本の映画を観ていると、アニメの方がテロリズムから逃げずに描く態度が見受けられる。具体的作品として比較して考えると「閃光のハサウェイ」「真夜中乙女戦争」「REVOLUTION+1」、更に「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE」この4作品だが、別記事で書いてみたい。

2023年5月鑑賞映画


劇場霊
配信
自転車旅の間のラブホテルで鑑賞。やっぱり、決定的に良い場面は少なくない。映画内演劇という渋さも好ましい。中田秀夫はこの映画のなかでも警察の内トラをやっている。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVOLUME3
TOHOシネマズ川崎
一応すべてのシリーズ作品を観ているけれど、前作の主人公のルーツを探す旅っぷりにダレてしまったがポップなノリを取り戻して面白い。

泥の河
横浜キネマ倶楽部
最近教えてもらった上映会で500人のホールに対して、半分ぐらいは来ていたので250人ぐらいは埋まっていた。名作として名高いが、こんなに渋い地味な映画とは知らなかった。地味だけれどとてもいい。船で売春をしているのは「鵞鳥湖の夜」でもあったが、人類の原則なのか。田村高廣の存在感が素晴らしい。敗戦後に人生のモチベーションが下がってしまった人物像は「少年」「しとやかな獣」などでも描かれていた。


聖地には蜘蛛が巣を張る
kino cinemaみなとみらい
「ボーダー 二つの世界」でイラン出身のアリ・アッパシはあんまり自身アイデンティティにこだわらない作品を北欧で撮っていくのかと思いきや、力をつけてしっかり自らのアイデンティティーに向き合う作品を撮った。近年の社会派ジャンル映画トレンドにも良い感じに合う。逃がしてやるからなと言っておくのは、苦痛を与えないようにするということかな。


ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい横浜シネマリン
金子由里奈監督の作品は初めて。「21世紀の女の子」出身で、前作として「眠る虫」という作品もあるらしい。アート系の方と話した時に名前が出てきたのを覚えている。そして、金子修介監督のご息女とのこと。なんとなくの印象ですが、金子修介のご息女と言ってもそこまで重たい印象がしないのが良い。ソフィア・コッポラとかは、父親の事が変に重荷になってそうだし、それを自分でも応えてしまっているような気もする。因みに金子一族では金子修介の父親の金子徳好の「ゼッケン8年」という本がめちゃ面白い。この本を読みたくて電子書籍を導入した。内容も紹介したいが、ここでは割愛。いつかこのブログに書こうと思います。

冒頭の七森が部屋でぬいぐるみを置いて、外に出るまでをワンカットで見せるところや七森が高校時代に告白されたところで橋の上には幼児がウジャウジャ居るのからして、映画的な仕掛けがあって面白い。若い監督の商業デビューなので、撮影がベテランかと思ったら、平見優子さんという、金子由里奈監督と前作から組んでいる方とのよう。他には私が観た映画ですと「kay」でも撮影をしている。七森を演じるのは細田佳央太で、彼の上品な雰囲気は「子供はわかってあげない」などでも楽しんだ。また、麦戸を演じるのは駒井蓮「いとみち」での好演が記憶に新しい。どちらの役者もソフトで爽やかな印象なので、この二人がぬいぐるみと喋るのも可愛く観れる。この映画を知ってから期待していたのは、映画における独り言問題で、映画のなかで脚本の都合として独り言が出てくるとそれだけで違和を感じるがぬいぐるみなら、(映像としての)違和感はない。それと、どうしても出演者が少なく、ガラガラの画作りになってしまうので、ぬいぐるみが居るだけで画面が楽しくなりそうだと期待していた。この観る前の期待には応えてくれた。私のお気に入りは窓から観て左側の一番下の女の子の赤ちゃん風?ぬいぐるみです。そもそも、街中でもたまにぬいぐるみを抱えている成人がいるけれど、見掛けると楽しくなる。一番面白かったのは、リュックサックを前に抱えてチャックからクマのぬいぐるみが顔を出している方だった。とはいえ私は、部屋が汚いということもありぬいぐるみを持っていない。レイアウトセンスがないため、フィギアなども持っていない。繊細な2人の主人公ともう一人白城という女性も出てくる。この人は新谷ゆづみで「やがて海へと届く」にも出演していた。この人物はぬいぐるみと喋らず、文化祭実行委員会にも参加している。このぬいぐるみサークルを客観視している。このキャラクターが最後にモノローグで「私はぬいぐるみと喋らない」と締めるのだが、そのビターというかドライな終わり方が良い。七森の加害者性に苦しむとして女性が足早に自らを抜いていくシーンがあるが、それに傷つくこと自体が逆ギレ的で緊張感がある。私は、全くもって気にしない。まどろっこしい言い方をすると、加害的な可能性の立場に置かれること自体は確かなのだから、それを受け入れるのが自らの存在への責任の取り方なのではないか、と思う。また、白城に対して女性の扱いが軽い環境で鍛えようとすること自体を説教するシーンもあるが、その責任のない説教の有害さをもっと自覚してほしい。七森はたまに見掛ける「女性はフェミニストじゃなきゃ」と説教する男性になってしまうかもしれない。ぬいぐるみサークルの人もコミットメントはしないので、優しいというか自分がめんどくさがられたり、ウザいこと言いたくない自分を可愛がるだけの人にも見えてしまう。この映画の製作者はそれをうっすら描くが告発するというほどのことはしない。このバランスが面白い。ハッキリと若者のディスコミュニケーションを描いた「冬薔薇」とも少し繋がる。

 

 

スーパーマリオブラザーズ

109シネマズ川崎

CMじゃないシネマだ!というセリフはこの映画制作者の心情吐露だと思うが、わたしもそう思う。これを観てゲームみたいという人は、なんでもゲームみたいに思えてしまうのではないか。ラストの戦いとゲームオマージュにできただろうけど、しなかった。音楽のセンスが完全にガーディアンオブギャラクシー以降。センスというより丸被りもあった。ジャック・ブラックの暑苦しくて歌が上手いというのも、スクールオブロックを引き摺ってるようで面白い。なにもりピノキオかかわいい。LINEスタンプ買いたい。

 

Tar

TOHOシネマズ川崎

開始5分のインタビューのつまらない切り返しでつまらなくなる予感がした。インタビューをされているので偉い人間であることを示すのもつまらない。昨年見た「ハケンアニメ」でも対談を盛り上げに使っていて表現と本当には関係ないことを有り難がるのが下らない。つまらないのに、深いと思い込んでいるような映画かと予感した。的中した。音楽教育やクラシックの指示の出し方ってあんなに大仰なのか怪しい。カラヤンの鉛筆を有り難がり、コレクションマニアのベテラン副指揮者をバカにするのは、すべてブーメランと言うよりかは、男はそういった歴史の連なりに自身を捧げることができるが、ターはできないということか。或いは結婚嫌いをターが指摘するが、それこそ社会の目線に対して構わず生きていけるということか。それに比べて、ターが自らのことを父親と言うのは、ヘテロ社会の規範に合わせることで、防御線を張るようにも見える。オッサン化した女性(レズビアン)を描くのが力点かな。だとしたらあまり感心しない。どんなセクシャリティの人でも権威には弱いので、(レズビアンなのに権力の濫用をしている)というのに特に驚かない。レズビアンだとフェアな人間ということもあるわけがない。レズビアンの権力の濫用を複雑や難しいという評価をしている方が見受けられるが、全くもってそう思わない。「エゴイスト」でもLGBTQをストレート俳優が熱演するという評価のコードに乗ってしまうのは、しらける。なんでストレートの人がLGBTQを演じるとその枠で評価してしまうんだろう。熱演しなければ越えられない壁がそこにあるようにも思える。「エゴイスト」では、男が男を買うことを俎上に載せた、今作では、女が権力をちらつかせて女と寝た。どちらも面白い問題提起なのに、流れていってしまうのが、なんだか言ってみただけのように思う。アジアを舐めるな。モンハンを舐めるなとも言いたくなる。地獄の黙示録」を使うことでそりゃそもそも地獄の黙示録が嫌いな私が嫌いに決まっていると清々する気もする。アジアは落ちぶれた欧米人の2軍ではない。アジアはアジアで存在する。アジアに来る欧米人は正直な評価としてと自国でしくじった人が多いと聞いたことがある。モンハンやbunkamura など日本絡みもたまにある。神経質でいかにもなレズビアン像もどうだろう。物語エピソード型の彼女の音楽家に対する評価も下らない。ラストは「フォックス・キャッチャー」を意識したのか。褒められるのは、実家に行ったときに兄が知らねぇけどやらかしたんだろと、ドライだが的確に見透かしており、泣きの場面にしなかったことぐらいか。あの、ゼミのシーンのバッハ講釈もダサくて、寒気がした。別にバッハに興味がない音楽家なんていくらでもいるし、居ていいだろう。クラシックでは、そこでマウント取るのが普通なのか?例えば、バンドマンとかにビートルズ聞いてないとと言い出す老害なんて、どう考えてもダサい。映画でも然り。オストルンドフォロワーの挑発的な作品として評価をされたかったのかもしれない。権威付けの為のオマージュについては以前からダサいと思ってるので、

 

J005311

シネマリン横浜

ぴあでアワード受賞したらしい実力派。役者の河野宏紀が監督脚本主演。かなりな俺映画だけれど、ダルデンヌ兄弟タル・ベーラ門下生のような被写体に近い撮影での緊張感が評価されるのは理解できる。ある意味我慢強いとも言えるが希死欲求の社会的要因に触れないのが、いかにも若者っぽい。

 

MEMORYメモリー

チネチッタ川崎

リーアム・ニーソンの映画はどんなのでもまず見るようにしているが、普通過ぎるような気もする。前作のブラックライトと比較すると撮影が凡庸過ぎてあまり感動しない。

 

イメージズ

角川シネマ有楽町

ロバート・アルトマンはズームとボケを多様して、ボケでシーンを繋ぐの。よく使う。女性の欲望サイコスリラー。カッコいいシーンも多かった。

 

ロング・グッドバイ

角川シネマ有楽町

天パと面長が合うな。大泉洋の「探偵はバーにいる」シリーズはこの映画を意識してるのかな。私も天パだけれど、面長じゃないのでソフモヒにするしかない。酒がアカビーチやライ・ソーダと言っていたけれど、あまりピンと来ない。ライ・ソーダってバーボンハイボールのことかな。赤い細いネクタイをしたい。原作を高校生の時に読んだけど、もっと湿った印象のような気がする。リーアム・ニーソンの「探偵マーロウ」が近々公開されるから読み直したい。

 

雨に濡れた舗道

角川シネマ有楽町

あまりピンと来ないまま終わってしまった。喋らない人は「仮面ペルソナ」でも出てくるが、そもそ相手をする必要がないと思っているので、合わなかった。気を遣わせる人は好きじゃない。

 

せかいのおきく

ユーロスペース渋谷

阪本順治の近作はなるべく見るようにしているが、絶妙な軽さをだせるのがすごい。「どついたるねん」からの友人であるリトルモアの社長の孫家邦やKINO FILMSの木下直哉や今回の出資者でありずっと美術で組んできた原田満生など、一緒に活躍してきた友達が偉くなったりして、お旦になっているような印象がある。映画的勢いが良く、最後の広角レンズ使いなども開放感が気持ち良い。

 

ワイルド・スピード ファイヤーブースト

TOHOシネマズ川崎

祝祭感が気持ち良い。この後ちゃんとこのシリーズを観てみようと思わせてくれた。どれを観たかもよく覚えていないが、前作のジェットブレイクは観たことがあることが分かりました。

 

最後まで行く

TOHOシネマズ川崎

元を観たことがないが、気持ち良い。ちょっとラストの3段オチが長くて終わるのを待ってしまっていた。柄本明がすごい存在感なのは、もうみんなわかっている。強い人は強いということはもうわかっている。

 

EO イーオー

ヒューマントラストシネマ有楽町

影響元の「バルタザールどこへ行く」を楽しめなかったので不安でしたが、映像の迫力を見せつけたいというパワフルな感覚は楽しめた。イザベル・ユペールの出演シーンのつまらなさはなんだろう。どうでもいい存在として出てくるという認識でいいのか。偉そうだけれどイーオーとしてはどうでもいい。そんなこともこの世界にはある、というのを表現しているのか。愚鈍さの象徴としてのロバなのか。最近ロバは映画によく出るが、はっきりと人間はもっと愚鈍になるべきであるというメッセージを表現して欲しいがなかなか出てこない。

 

aftersun アフターサン

ヒューマントラストシネマ有楽町

今考えれば、私が小学生の時にアメリカ家族旅行をした時に父は準大手の会社を辞めたタイミングだった。父親がそんな決断をしていることを当時は知らなかった。そんなことを思い出してしまう。31歳で娘が10歳なので、20歳頃で子供を持った父とはどんな存在だろう。何度も書いているかもしれませんが、私は父38歳、母34歳の時の子供なので自分の記憶としては最初から両親はおじさん、おばさんだった。私が落ち着いてしまっているのは、親の年齢が高いので発育環境として年寄りに囲まれていたことが影響していると自己分析している。どこかフラジャイルな印象の父の背中を観ながらも、楽しいトルコ旅行を過ごす10歳の娘。29歳独り身の私としては、子供を持つなんて楽しそうと思ってしまうが、それは単に経験したことないからお気楽に考えてしまうのか。なぜ、父は死んでしまったのか。はっきりとは表現されないがセクシャリティに悩んでいたのかもしれない。「J005311」でも理由を描かないが、その上品さが今のトレンドなのかもしれない。

 

海外
新作8本
旧作3本
計11本
日本
新作4本
旧作1本

ソフト1本

計6本

合計17本