囚われの女
早稲田松竹
女性をストーキングする若旦那。この冒頭が良い。哲学的なテーマもあるけれど、インポテンツの男が女の性に囚われているということかな。そこに我慢ができず別れようとするが、なんとか回復したように見えて女は自殺してしまう。ゲアトルーズや最近だと弟とアンドロイド、画面としてはアンジェリカの微笑みも思い出した。体臭についての問答は、笑ってしまった。
オルメイヤーの安房宮
早稲田松竹
白人の父とアジア人ダブルの娘の映画、コミュニケーションを直接的に描くことは少なく、娘の居ない時間が長い。欧米インテリがいかにも好きそうなアジアと植民地と父性がテーマ。船に乗りたくなるのは確か。照明が評価されてるのかな。ラストに止まっている顔をずっと映す映画ってあんまり好きくない。読み取ってもらうのを待つ甘えた態度は評価したくない。
ヒューマンボイス
シネマカリテ
アルモドバルの短編。ティルダ・スウィントン一人芝居。自殺を仄めかすという脅しはどこでもあるのか。カッコいい自宅を舞台セットとして見せて、そこを出入りするのが新鮮なのかな。
パラレル・マザーズ
シネマカリテ
アルモドバルは前作のが自伝的集大成映画だったから、どうくるかと思ったら女性と出生。そして父になるとか思い出してたが、重い展開が2つある。同性愛についても描かれていて、ちょっとスイート過ぎやしないかと思っていると決定的な断絶を伝える日が来る。スペイン内戦の遺骨収集がサイドストーリーだけれど、あまり混ぜないのが良い。we should all be feminist Tシャツがでてきて、なんとなく調べたらディオールで10万ぐらいするのね。
ファイブ・デビルズ
武蔵野館
デヴィーが可愛い。あのサングラス欲しい。少し目を離した隙に自分の尿とカラスの死骸を煮詰めてるのが面白い。あの夫は同性愛関係にあった妹の元彼女と後釜として結婚するってどんな心境なんだろう。確か、「十九歳の地図」のなかで後釜するのも悪くないのよと言っていた。世界に恋愛や結婚で後釜ってどのくらいの比率なんだろう。
甘い夏
東京都写真美術館
先週のポーランド映画祭の予告編で知り鑑賞。海外映画配給会社のマーメイドフィルム関係者が製作。ロメールのバカンス映画感覚。劇場内に製作スタッフや役者の友達っぽい人が多数。男2女2の組み合わせ。ひっくり返った組み合わせはロメールの先週見た「友だちの恋人」のよう。
遊んでた29歳が急に気合い入れ直して就職するけれど、その面接が恥ずかしい。
アドベンチャーランドへようこそ
東京都写真美術館
自宅にDVDを持っているはずだが、劇場で観たくて鑑賞。この作品が青春特集として上映されるのを知って駆け付けた。やっぱりいい。今見ると脚本がいちいち上手い。ゲームをしながら主人公の立ち位置をほのめかしていたり、主人公の友人のユダヤ人に対する差別をサラッと見せて社会的背景もチラつかせる。ヒロインが主人公に惚れ直すのが、暴力というのが秀逸。確かに喧嘩になったときにその人の本性を見るというの判断は間違っていない気もする。
ブレスレス(1983)
ゴダールの「勝手にしやがれ」をアメリカでリメイクしたという珍作。ビジュアルポスター的に繊細な映画なのかなと思ったら見当違いだった。今年「勝手にしやがれ」を観たときにゴダール自らを重ねているらしい主人公にとにかくイライラしていたが、この作品の方がイライラが強い。暴力的なのは別に構わないけれど、世の暴力はもっと冷たくて容赦ないように思う。特にブレスレスでは私と同じ28の男が大学生を追いかけまわす展開だが、若くて地縁がない留学生はこれぐらい手荒く雑に扱って大丈夫という差別を嗅ぎつけてしまった。この主人公をなんとリチャード・ギアが演じている。リチャード・ギアの顔は幼少期から嫌いだったが、若い頃からこんな顔なのか。映画として拳銃魔がでてきた。
シスター夏のわかれ道
ヒューマントラストシネマ有楽町
「1650日の家族」、「ベイビーブローカー」、「カモンカモン」などに連なる養育問題映画と「はちどり」「わたしは最悪。」などの女性映画をを思い出す。だいぶこの弟が私に近い。17歳ぐらい年が離れていてもこんな距離感なのか。養子に出すっていうほど悪いことなのか。子供は親が育てるものという考えた方ぐらい我々現代人は疑ってもいいのかもしれない。ただ養子に出た人って大人になるのが早そうだ。
母性
チネチッタ川崎
現代人
神保町シアター
渋谷実監督作。談合映画。たまたまかもしれないが昔は談合ジャンル映画がそこそこあるのかな。池部良のニヒルでドライな態度が最高。談合を後輩に継がせるには、まず飲み屋を紹介して、その店の人と付き合わさせて身動き取れなくしてしまえばいいのか。そんなろう絡テクニックがあるのか。その飲み屋のVIP席に連れていくときの狭い廊下がカッコいい。汚職の事をサンズイという隠語があるらしい。
夜の流れ
神保町シアター
月の満ち欠け
Tジョイプリンス品川
早稲田松竹が出てくるのは映画館リスペクトや松竹配給なので驚かない。けれど大崎アートヴィレッジというビルが出てくるのに驚いた。大崎アートヴィレッジの外をロケしているのは、「アキラとあきら」でも出てきたような気がするけれど中の受付まで出てくるのは驚いた。仕事で通っているビルなので。また今度雑談で話題に出してみようかな。さらに大森、品川プリンス、東京駅がでてくる。廣木隆一の前々作「あちらにいる鬼」の寂聴の家をロケで使っていた。ウイスキーは何を飲んでいるかわからなかった。輪廻転生で子供がやけに大人びた言動をするのが、面白い。おい、コゴナダ、ジャパンでは輪廻転生を使ってこんなメロドラマを大衆的に作れるんだぞ。メロドラマとして大衆的に輪廻転生を楽しむか、アート映画としてショーケースに入れて愛でるか。輪廻転生については日本の方が考えが進んでいるというか浸透しているんだと胸を張っていえる。大泉洋って老けないな。高田馬場を80年当時っぽく撮っているけれど、あれはセットかCGかどちらだろう。蒙古タンメン中本のあるはずの場所が広告で隠れていてアレと思ったら、高田馬場の駅表示板からして違うようだったから、セットか。野暮
なことをいうと有村架純は今の年齢でいうと71歳ぐらいだから、80年当時だから髪を梳いておらず、もっとモサモサだったはず。服装も革ジャンじゃなくて肩パッド入ったジャケット着させるとそれっぽくなるような気がする。有村架純も三角哲彦どちらも古臭くない顔なので、違和感を感じてしまう。二人のコスプレはみんな楽しめるはずなんだけど。田中圭は少し古臭い雰囲気の服装だった。この映画を観ると服装や髪型の時代の移り変わりもあるけれど、顔そのものも時代とともに変化するのではと思った。顔面のオーパーツを集めて時代設定を固めるというのはできるかもしれない。「あちらにいる鬼」は時代表現をトヨエツと寺島しのぶだから成功していた。映画自体はとても楽しみました。輪廻転生ってどちらかというと、類型として捉えてるのかもしれない。アフターヤンは輪廻転生をケースの中で丁寧に取り扱っていたが、そんなこと5歳児でも知っている、もっと大衆的に楽しんでいいのにと思っていたので、メロドラマとして描く月の満ち欠けが頼もしい。
すずめの戸締まり
まさかの一人鑑賞。ダイジンと草太どちらが世界の犠牲者になるかはどちらでも良いのかな。この映画では、草太の方がうまく立ち回って外部の人を味方に付けられたという認識。ダイジンみたいに自らが世界の犠牲になることを避けるのはいけないことか。私はそう思わない。東日本大震災を経ても別に日本社会は改善されたとも思わない。もっと分かりやすくいうと投票行動とかには影響を与えなかった。正しくは保守化が進んだように思う。前作の「天気の子」は「サウダーヂ」とかと並べても良い日本の限界を描いた作品で楽しんだ。日本ダメなんじゃないというフィーリングが全体に流れていた。掛川駅や東海村では原発がいかに安全に運用されているかのCMやノボリが垂れ流されている。
グリーン・ナイト
TOHOシネマズシャンテ
覚悟を持てというのがこの映画のテーマかな。養子とかもこういった気合いを入れさせる手法のひとつなのかな。現代でもボンクラ3代目の社長の息子とかが丁稚奉公させたりするのもこれと同じか。一般社員でも出向、転勤をさせることで一皮むけさせたりする。主演のデヴ・パテルは日本の役者でいうとカトウシンスケと似てる。経験や学習により成長するのではなく、覚悟を持った時に人は成長するというのは、あまり表で語られない真実なのかもしれない。
PLAYBACK
ジャックアンドベティ
ホンサンスの同じ日を思い出した。こっちの方がずっと手際がスマート。車内のザクザク編集など、シーンごとで面白い。三宅はどこかのインタビューで初期は脚本に興味がなかったという発言をしていたと思うが、これをみるとなるほどと合点がつく。「PASSION」の河合青葉、渋川のメンツは嬉しい。菅田俊、ムラジュンなど年齢が自身より高めの男性を描くというのがテーマだったのかも。菅田俊や渋川の声は音楽的気持ちよさがある。
マッドゴッド
ジャック・アンド・ベティ
ある人から年間ベスト級に良いとプッシュしてくれた。観るかどうしようかなぐらいでしたが、そこまで言う人がいるのならと思って鑑賞。うまくハマれないまま終わってしまった。解説を読むとストーリーど返しらしい作り方とのことでそれも納得する。美術系のインスタレーションとして掛けられてそう。前半は下への動きで後半は横移動なのが面白い。
さかなのこ
キネカ大森
ケイコ目を澄ませて
109シネマズ川崎
「きみの鳥はうたえる」も凛としてさっぱりした上品さでと音楽やアート方面からも愛される作品だった。今回もユリイカで特集号が組まれていたりと、愛されている。更に書くとボクシング映画は日本でかなり多く、また、観客層は高齢者が多い。今作も私が観た劇場では高齢男性がかなり多かったが、新宿で鑑賞した友達も高齢者が多いと言っていた。この作品も凛としていて心地よい。革グローブの擦れる音が気持ち良い。撮影は16mmで月永雄太。そりゃ良いに決まってる。ストーリーとしては聴覚障害の女性ボクサーがプロ戦で勝ってから次の試合で負けて、ジムが閉まってしまうが、川沿いの土手から、カメラを右側に走り去っていく。人生は勝ち負けじゃない、続いていくんだというのが気持ち良い。「こうなったからこう」のような図式的な態度が全くないのが素晴らしい。
men同じ顔をした男
TOHOシネマズ川崎
ロンドンの夫婦の部屋の西陽がオレンジ過ぎやしないかい。男の顔がボーダーの人かと思ったら、007の副部長ポジションの人か。ボーダーを思い出していたので、ドンドコ出てくる場面ではオスと見せ掛けてメスでした展開かと思ったら、おっさんからおっさんが出てくるので驚いた。それと、教会の場面のあなたは彼に許す機会を与えたか?という嫌な問いは、身近な人から女性と女性の相談の中で言われたことがあると聞いたことがあり、キツかった。それと、やけに顔がはっきりしている子供の気持ち悪さ(映像手法としてはおじさんの顔コラ?)を見せつけられて、私もこの少年のように子供の時から目鼻立ちと眉毛がはっきりしている子供だったので周囲の人間が私の顔を気持ち悪がっていたのはこれが原因か納得した。
RRR
Tジョイプリンス品川
縦の動きで物語るのがとにかく素晴らしい。車道、列車、川、独房、地上、灯台更には肩車。アイデアと演出がド派手で多いので、普通のメジャー映画を1000キロカロリーだとすると5000キロカロリーぐらいある。とにかく面白い。何人を率いるのだろう。こんなのを指揮するにはどうすればいいだろう。
アバター ウェイ・オブ・ウォーター
福岡
新宿武蔵野館
おっさんファンタジー過ぎやしませんか。古本屋を営んでいるおっさんが、大学生の頃、三角関係だったおっさんに会う為、不思議なそばにいてくれる若い女って、やけに都合が良い。こんなおっさんに構ってくれるかな。三角関係をサンカクカンケイと発音するのが勉強になりました。パク・ダムさんがでてきたり、この監督の映画は出演者が豪華。
群山
新宿武蔵野館
ムン・ソリ主演。この群山という街は日本の統治時代の建屋が残っているらしい。このチャン・リュル監督は朝鮮族の中国出身で現在は韓国を中心に活躍している。どの映画でも東アジアを見つめる目線が多重的で素晴らしい。
そばかす
新宿武蔵野館
Revolution+1
ジャック・アンド・ベティ
ブルーハーツの未来は僕らの手の中の朗読を聴いた時にベタな演出だなと思ってしまったが、それでも凄い歌詞だと思わせてくれたのは、あくまでマーシーの凄さ。マーシーって作詞家として評価ちゃんと受けてるのかしら。それに対して中上が「周りはB`zやwandsが好きだけど僕はブルーハーツが好き」という発言で単なる差異化の問題だったのかとガックリしてしまう。これを観るともちろん宗教2世問題について考えるがカルト左翼2世問題も顕在化していないだけで、あるのかもと思えてくる。この映画を観た前と後で考えが変わったりするほどのパワーがない。フィクション、実録どちらの路線で進めるのかがはっきりしないままになってしまった。それでも妹の爽やかな態度にホッとさせてもらえたけれど、それでいいのかも判断を保留しなければならない。
計32本