TはTOKYOのTのブログ

映画ログを中心にしております。映画館での鑑賞が中心です。旧作より新作が過半数を超えるのが方針としてます。

カウンセラー/酒井善三

新文芸坐で虚空門GATEの上映で予告編で、近日公開予定のカウンセラーを知った。緊張感でなんだか面白そうだと思い鑑賞。観客はおじさんが多め。新文芸坐はいつもだいたいおじさんが多めかな。

あらすじは、カウンセリングの部屋、これが一見自宅のように見えるのもプライベートな空間に見えて緊張感がある。しかも、心理カウンセリングというのかな?、そのため、門外漢の私には、こんな一軒家を使ったカウンセリング施設あるかもなと思える。そこに、女性カウンセラーのもとにノーアポで診察を依頼してくる女性がいる。更にこの人は戸を開けることもせず、手を洗っていると急に後ろに現れる。鏡越しの女と会話をする間、蛇口で水が流れる音が鳴り続けるのが、妙に気持ち悪い。仕方なくカウンセリングすることとなり彼女が語り始める。

 

回想シーンもあるのだが、これが新鮮なのが素晴らしい。だいたいは回想シーンが始まるとどうしてもライブ感が削がれて、映画に対して冷めてしまう。なのにこの映画では、回想シーンの音声とアクション繋ぎの面白さで、緊張感が増す。これは、今まで考えたことがなかった。

 

一本道の時間軸の映画だと、どうしたって繋ぎは限定される。登場人物を増やせば視点や空間も増やすことができるが、この映画ではライブ映像はこの家から一切でない。だからこそ、回想シーンを入れることで、複雑なカットの分岐が可能になる。複雑といってもそんなに特徴的なASL(一カットあたり秒数平均)ではない。多すぎず、少なすぎずぐらい。どのシーンも面白い。あるシーンでは、驚きましたがなんで驚いたか今でもわからない。冒頭のボディタッチから気持ち悪い。

 

編集が観ていて楽しい。この回想シーンがあることで、音と映像どちらもずらしたり、繋げたりどちらも自然だったり、不自然だったり、こればかりは観てもらうしかない。こんなにいろんなテクニックを使いこなせるのなら、商業映画でも面白い映画を撮れそう。なにより面白さが開かれているのも素晴らしい。シネコンで上映しても好き嫌いはあるだろうけれど誰もが、なんだこれは、と思える良い意味で刺激やサービスがたっぷり。セリフも意味が分かるような分からないような意味不明なのもあるんだけれど、それが難解さに導いていくようなタイプではなく、ゴロっとした意味不明さなのも楽しい。

 

回想シーンで映画をこんなに面白くさせることができるなんて良い収穫だった。今後映画を観る際は、回想の有無や使い方に目が行くかもしれない。回想だけに絞った映画本などあるのだろうか。参考に読んでみたい。

 

オフィシャルサイトを観ると、製作費を詳細にPDFで公表している。もっとこの作品で収益を上げて、次回作を作りたいとのこと。是非、今後も作品を作り続けてほしい。